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T君の道草

毎月10日・25日発行

タクシー日本新聞社

編集長の道草

田中一村に出会う旅(3-1)

 筆者は、一浪して京都のある私立大学に入学したのであるが、大学には、数日しか通わず、今で言うところのニート、あるいはプー太郎としてぶらぶらしていた。ただ、ぶらぶらしていたというより、世間からドロップアウトして、出口の見当たらない穴倉に入っていた。
 家出をして尼崎総合文化センター裏のボロアパートに身を潜めていた。家賃5000円共同便所で風呂はもちろんなし。夏は、西日があたり暑いのを通り越して狂気の日照り。なぜ、そんなところに身を潜めたのか? それは、総合文化センターに尼崎一の図書館があったからである。毎日、図書館に通い、本を読み、夜は、阪神尼崎駅周辺の居酒屋で酒を飲む、お金がなくなるとアルバイト、そんな生活をしていた。
 図書館に通っていたからといって何か研究する課題があるわけでなし、そこにしか居場所がない、そんな感じで通い詰めた。時間だけたっぷりとあった。アメリカ文学のコーナーでその本棚の端から順番に読む、というようなこともした。
 特に印象に残ったのは、アーネスト・へミングウェイやパール・バックの作品。生命力旺盛で、力強く、かつ感動的であった。一方、印象深いのは、スコット・フィッツジェラルドの「グレイト・ギャツビー」で映画の題名「華麗なるギャツビー」でヒットした小説である。題名どおりの華麗な映画のイメージと小説とは異なり、また、自分の4畳半の安アパートでその図書館から借り出した本を段ボール箱の上において、そして真夏、パンツ一丁とタオルを頭に巻いて、西日を受けて噴出す汗を拭きながら、くらくらする頭で文字を追い続けた。この小説はなんとしても読破するんだと、意地になっている自分の姿をいまもまぶたに浮かぶ。小説の内容をすっかり忘れてしまっているにもかかわらず、けんか腰で本を読んだのは後にも先にもあの時だけであったが、へとへとに成りながらも一応、最後までページを繰ったのであった。



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