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T君の道草

毎月10日・25日発行

タクシー日本新聞社

編集長の道草

田中一村に出会う旅(4-3)

 結論を急ぎます。今までほったらかしておいて、結論を急ぐ、でもないのですが、これ以上、気ままな文章の旅を続けていると読者の方に見捨てられかねません。ということで。
 なぜ、田中一村が奄美大島を終の棲家にしたのか。それは、気候が温暖で自然が豊かであること。そして、人に優しく争いを好まない琉球文化圏にあってなお唯一、無抵抗、非交戦の歴史と気質を持っていること。昔の言い伝えによると奄美が王朝時代に南の海から船団が奄美大島に向かってきたことがあった。奄美の王様は、てっきり奄美を征服するために攻めてきたと思い、お妃と相談し、二人とも自害し恭順の意を示し、島民の命を奪わないように嘆願したという話が残っている。そのときに奄美王朝は滅びてしまったのだが、奄美に責めてきた船団が琉球王朝の船で、皮肉にも奄美を征服するために来たのではなく、友好関係を結ぼうとしてきたということであった。
 さらに江戸時代には島津藩の領地になり、サトウキビ作りに厳しい労役を課せられたが、耐え生き抜いた。幕末から維新にかけての薩摩藩の財政、戦費は奄美のサトウキビが支えたといわれている。
 田中一村は豊かな自然と暖かな島民に包まれ、自らの画業の境地を極めることに専念できたのではないかと思われる。田中一村は、自分の作品を売ってお金に換えなかった。それは、どうしても買い求めたいと義理ある人に懇願された一度の例外を除いて。
 反面、近所の農家の主婦が、ベジタリアンの田中一村に何かと気を使って野菜を再三、差し入れしていたことがあって、その主婦に田中一村は、お礼として作品を無償で進呈している。その複製画は奄美の一村美術館で見ることが出来る。中央画壇と決別し、名誉欲、金銭欲をかなぐり捨てて、自らの画業を極めるためには、何ものにも犯されない、何ものをも犯さないで生命力に輝く自然の中に身を置く、田中一村の死に場所が必要だったのではなかったか。これが奄美を訪れて感じた、なぜ田中一村は奄美を終の棲家にしたのか? の答えだった。

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田中一村に出会う旅(4-2)

前回の(4-1)で「島尾敏雄の思想や過ぎ越し方に、田中一村が奄美大島を終の棲家に決めるに至った心象風景のようなものを感じるのであった。そのキーワードは、島尾敏雄が提唱した『ヤポネシア』思想である」と記したまま続きを書いておりません。前回が昨年の3月8日ですからうかうかしていると丸1年の空白となります。決して忘れていた訳ではないのです。
 田中一村だって同じペースで絵を描き続けたわけではありません、といって無理やりの弁解をしても始まりません。本当は、サボっていたに過ぎません。ここは率直にお詫びしなければなりません。申し訳ありませんでした。
 ということで「ヤポネシア」思想です。これは、「島尾敏雄の帝国と周縁
―ヤポネシアの琉球弧から―」(森本眞一郎著、不二出版)に詳しい。その書き出しの一部を下記に紹介します。
 「NHKの天気図について名瀬測候所に電話で確認した。「奄美大島は、九州?それとも沖縄ですか?」「与論島から北は九州です」「トカラ列島は、種子・屋久?それとも奄美?」「トカラ列島は奄美です」
九州島と台湾島とのあいだに弧状につらなる島々を琉球列島という。地理学と地勢学用語の「琉球弧」とほぼ同義語である。約千二百㎞(本州島と九州島を合わせた長さ)。無人島も入れると百四十六島が点在する弧状列島であり、太平洋西縁(アジア大陸東縁)に一連の花綵列島のひとつを構成している。
 私が住んでいる鹿児島県の奄美群島には八つの有人島がある。その島々は、地理学では「琉球列島」、あるいは「琉球弧」の「中琉球」だが、行政区ではひとくくりに「九州」の南限である。また、文化の範囲では「九州(大和)文化圏」の南限ではなく、「琉球文化圏」の北限として位置づけられている。いずれにしても「奄美」という地域は、人為的な「地理」「行政」「文化」などを軸にしてくくられるから、「日本(ヤマト)」と「琉球(オキナワ)」、どこからくくってもはしっこにおかれることになる」
 ここで覚えておいて欲しいのは、奄美大島は九州の南限ではなく、琉球文化圏の北限に位置するということです。


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