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おもしろくてお役にたつタクシー専門情報紙

T君の道草

毎月10日・25日発行

タクシー日本新聞社

編集長の道草

行政不服審査法に基づく審査請求書全文



東京都江東区に本社を置くロイヤルリムジン(金子健作社長、タクシー50台保有)が
1月26日に関東運輸局長に提出しました
「タクシー増車申請却下の処分取り消しを求める行政不服審査法に基づく審査請求書」
の全文は以下の通りです。

ご参考まで。



審査請求書

関東運輸局長 殿
平成24年1月26日



審査請求人代理人  弁護士 横手 聡

同              越智 敏裕


当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり

審査請求に係る処分 
審査請求人の平成23年6月30日付け事業計画変更認可申請に対し、関東運輸局東京運輸支局長が、審査請求人に対して、平成23年11月30日付け東運輸第2402号をもってなした却下処分

審査請求にかかる処分があったことを知った日
 平成23年11月30日

処分庁の教示の有無
 有り

処分庁の教示の内容
 「この処分に不服があるときは、行政不服審査法に基づき、この処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に書面で関東運輸局長に対し審査請求をすることができます。
また、行政事件訴訟法に基づき、不服申し立ての手続きを経ずに、処分があったことを知った日から6ヶ月以内に国を被告として処分の取消しの訴えを提起することができます。なお、訴訟においては国を代表する者は法務大臣となります。(処分があったことを知った日から6ヶ月以内であっても、処分の日から1年を経過した場合には、処分の取消しの訴えを提起することができなくなります。)」

審査請求の趣旨

上記審査請求に係る処分を取り消すとの裁決を求める。


審査請求の理由

本書面においては、次の語につき、( )内の略称を用いることがある。
・道路運送法(法)
・特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(特措法)
・平成21年9月30日付け関東運輸局長ほか「特定地域の指定及び特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化の推進のために監督上必要となる措置の実施について」(本件公示)
・平成21年国土交通省告示第1036号「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する基本方針」(基本方針)



第1 本件審査請求の概要

本件は、審査請求人が、一般車両タクシーを50台から80台に増車するため、平成23年6月30日付けで事業計画変更認可申請(以下、「本件申請」という。)をしたところ、同年11月30日付けで、関東運輸局東京運輸支局長により、本件申請に対する却下処分(東運輸第2402号)(以下、「本件処分」という。)がされたことから、その取消しを求めている事案である。
 本件処分の理由は、提出された収支計画上の増車車両分の営業収入が、①「特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであるのか」(拒否理由①)、また、②「新たに発生する輸送需要によるものであるのか」(拒否理由②)、明らかではない(本件公示Ⅲ3(1)①)とされている。
 以下では、本件申請が本件公示の定める要件、あるいは、法及び特措法の認可要件を満たしており、本件処分が違法であることについて述べる。


第2 本件公示Ⅲ3(1)の充足 

1.本件公示Ⅲ3(1)①(収支計画適合性要件)について

本件公示Ⅲ3(1)は、特定地域における営業区域内の増車の認可申請に対し「増車後の一定期間における収支計画等基準適合を証する書面の提出を求め、かつ、申請後に法令遵守状況の確認を行うための監査を実施した上で、審査基準に適合することに加え、次に掲げる基準・・・に適合するものに限り認可するものとする。」と定め、4つの基準(①収支計画、②運転者の確保状況、③実働率、④法令遵守状況。以下、「4基準」という。)を掲げる。
4基準のうち、①収支計画では、「提出された収支計画上の増車車両分の営業収入が、申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」が要件とされている。本件申請は、以下に述べるように、この要件を充足している。

2.特別区・武三交通圏内における輸送需要の発生(拒否理由①)

審査請求人は創業以来、旗艦サービスとして、都心を目的地として成田・羽田空港を利用する外国人のビジネスゲストを対象に、外国語のできる乗務員による予約送迎サービスを提供してきた。
近時、①ニッチであったこのサービスに対する需要が着実に増えつつあることに加え、特に②平成22年10月以降、国際化の進む羽田空港が24時間化されるに伴い外国人ビジネスゲストが増加しており、さらに、③平成23年10月以降、成田空港においてスポット増設などビジネスジェットの促進に関する具体的な措置が次々と取られていくことにより、同空港におけるビジネスジェットの利用が現実に拡大している。本件増車申請は、かかる新規の需要増が確実に認められることから、この需要に応えるためにしたものである。
海外から成田・羽田空港に到着した外国人の目的地のほとんどは高度の商業・観光集積地である東京都内のホテル・会社等であり、他の地域に向かうことは少ない。審査請求人の送迎実績でも、空港からの目的地が特別区・武三交通圏でも都心三区(港区、中央区、千代田区)に集中している。これは、主要ホテル、外資系企業の支社やビジネスゲストの取引先企業の多くが都心部に集中していることによる。
以上から、本件申請にかかる増車が、特別区・武三交通圏内における輸送需要に対応するものであることは明らかであり、よって、本件収支計画上の増車車両分の営業収入が、特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであることは明らかである。

3.新規の輸送需要の発生(拒否理由②)

(1)明らかな新規輸送需要発生の要件について
本件公示は、「新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」を要件として掲げている。この文言の意義は一義的ではないが、そもそも輸送需要の発生は諸般の事情により複雑に影響を受け、必ずしも予め科学的・明示的に証明できる性質のものではなく、一定の予測とならざるを得ないから、申請通りの増車を実現した場合に、その増車分に見合っただけの需要が社会通念上合理的に見込まれると認められれば、この要件を充足するというべきである。

(2)成田空港におけるビジネスジェットの促進措置
成田空港でビジネスジェットを利用する外国人の送迎サービスに対する需要は着実に増加している。審査請求人の同サービスについては(震災後の落ち込みはあったものの)、現在、予約本数がほぼ飽和状態にある。
審査請求人には、ビジネスジェットを含むプライベートジェットを管理する取引先や台湾の大手不動産業者など成田空港を定期的に利用する多数の提携先があり、タクシー輸送の独占契約を締結するなどしている。例えば不動産業者は都区内を中心に投資対象として多数の不動産物件を実際に見て回るためにタクシーが必要であり、その際に、外国語ができる乗務員を養成する審査請求人のサービスが強く求められるのである。
かかる提携先がビジネスジェットを利用する場合、その利用者(ビジネスゲスト)のみならずそのクルーの送迎に対応する必要が生じるところ、成田空港におけるビジネスジェット拡大措置を受けて、審査請求人は現実に取引先から、車両数30両の増加と外国語対応人員70人の増員を要望されている。このような状況にあってみれば、増車を実現し、外国語対応のできる人員を増やすことにより、顧客の要請にこたえることができ、飛躍的に需要の生まれることが確実である。一方、このまま増車ができなければ、車両数・人員数の不足から、顧客の要請にこたえられず、現在の顧客を失う恐れすらあるといえる。

(3)ビジネスジェットの推進等の背景事情について
国土交通省は、オープンスカイ構想の下、「ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告」(平成23年6月)を発表した。政府は、「国土交通省成長戦略でも指摘されているとおり、首都圏空港でのビジネスジェット受入体制の改善は喫緊の課題である」と指摘するなど(同報告6頁)、我が国におけるビジネスジェットを推進する姿勢を鮮明にしている。また、隣国中国において、10年以内にビジネスジェットの保有数が1000機を超え、米国に次ぐ世界2位のビジネスジェット市場になると見込まれることからしても、我が国におけるビジネスジェットの利用が増えることは確実である。
特に成田空港では、すぐ近い将来にビジネスジェットの利用増が確実に見込まれるから、審査請求人のサービス利用者数も必然的に増大することになる。

(4)羽田空港の国際化・24時間化
国際化された羽田空港では、平成22年10月21日の24時間化以降、空港利用者のタクシー需要が着実に高まってきている。例えばデータのある社団法人東京乗用旅客自動車協会「東京国際空港定額運賃輸送実績集計表」(甲1)の運送回数の推移をみると、平成22年11月から同23年6月までは季節変動や東日本大震災などによる変動はあるものの、概ね3千~4千回程度の運送回数を維持しており、7月以降、11月まではさらに需要が増え5千回の運送回数となっており、増加傾向にある。夜間にはタクシー以外の公共交通を利用できないから、24時間化は直接的にタクシー需要増に繋がる(単に夜間に到着する外国人だけでなく、夜間も営業する関連企業の従業員等のタクシー需要が確実に高まっている)ところ、上記「定額運賃」輸送実績はその一部であって、羽田空港利用者によるタクシー需要の具体的な増加を顕著に示す好例である。
羽田空港では新設国際ターミナルの更なる拡張などが予定され国際空港としての役割が近く本格化するが、これらの需要増に対応し、審査請求人の提携先が成田空港に加えて羽田空港にも業務展開して常駐社員を置くことから、羽田空港でのサービス提供を審査請求人に求めているが、現在の50台ではこれにほとんど対応できない状況である。

(5)観光立国と中国人観光ビザ要件の緩和について
政府は、観光立国を目指し平成20年10月1日に観光庁を設置、訪日外国人3000万人の達成を目標としている。訪日外国人旅行者数はビジット・ジャパン・キャンペーンを開始した2003年の521.2万人が、2010年の861.1万人へと、着実にその数を伸ばしている(甲2)。
また、平成23年9月1日から中国人観光ビザがさらに緩和され、滞在期間が15日間から30日間に延長された。これにより、ほぼ1か月間滞在する中国人観光客の増加が見込まれている。
したがって外国人観光客、特に中国人観光客からの新規需要が確実に見込まれるところである。
以上からすれば、乗務員の外国語による対応サービスを利用する外国人数の増加は、合理的に見込まれるといえる。

(6)都心部での需要増
上記の通り外国人による需要増が見込まれ、現に増加しつつあることから、東京都心部でも、需要が増加している。例えば、審査請求人の固定客である外資系コンサルタント会社の場合、一日に幾つもの企業を回るが、ホテルから支社、支社から取引先、取引先から飲食店、ホテルへの移動などの依頼がある。しかし、現在の車両数ではこれらの需要に十分に対応できず、相当数の依頼に対して、お断りせざるを得ない状況にある。

(7)まとめ
以上の状況に鑑みれば、本件申請にかかる増車分に見合うだけの需要が社会通念上合理的に見込まれるというべきであるから、新規輸送需要発生要件を優に満たすといえる。
なお、特に最近における審査請求人の輸送人員・運送収入実績・日車営収は右肩上がりであるが、これは、審査請求人のサービスに対する新規需要の存在を端的に示している。

4.審査請求人の事業の特長について

(1)審査請求人の起業理念
 本件申請にかかる収支計画上の増車車両分の営業収入が、上記のような成田・羽田空港利用者による以上のような新規発生需要によるものであることは、審査請求人の事業の特長に照らしても明らかである。
 審査請求人は、空港のタクシーは「日本の玄関」であるとの認識の下、外国人向けサービスを特に充実させてきたのであり、日本で最高レベルのサービスを提供していると自負している。
審査請求人は、付加価値として徹底した良質なサービスを提供し、低サービスのタクシー業界を「おもてなし産業」に変革する「タクシーのコンシェルジュ化」という起業理念の下、通常のタクシー会社にはない次のような特長を有している。

(2)乗務員の語学力
審査請求人は、外国語のできる、あるいは外国人の乗務員を積極的に採用しており、乗務員の3~4割は外国語による対応が可能である。通常のタクシー会社がする乗務員募集の際には、運転免許や乗務員としての経歴を念頭に募集を掛けるが、審査請求人の場合、むしろ「英語を使う仕事」として乗務員を募集している。
上記のとおり、本件増車申請は、成田・羽田空港における外国人向けサービスの需要の増大に対応するものであることから、審査請求人は外国語対応が可能な乗務員を採用することが決まっており、審査請求人は今回の増車申請を機に、全乗務員の半分程度を外国語対応可能な乗務員とする予定であった。
なお、外国語対応ができない従業員もいるが、その解雇はできないから、上記新規需要発生に対応するためには、増車と共に、外国語対応が可能な従業員を新規に採用することが不可欠である。

(3)もてなしの精神
審査請求人は、ホテル・オークラの元社員により乗務員に対するマナー教育を徹底するなど、利用者に対する丁重な対応を義務付けている。
例えば、迎車の際には15分前の到着を義務付け、高齢者・障害者のお手伝いをして乗せられるように乗務員を教育するなど、もてなしの精神を重視し、幾つもの具体的なマナーを乗務員に義務付け、「コンシェルジュ」としての良質なサービスを提供している。実際に、利用者からは、審査請求人のタクシーを利用して非常に良かったという、満足の声が多数寄せられている。
空港は、我が国の玄関口であり、来日外国人に我が国の第一印象を与える場所である。空港からのタクシー乗車の際に、審査請求人の最高水準のサービスを体感して満足してもらうことは、我が国のイメージ向上という意味でも非常に重要である。観光立国の実現は、例えば審査請求人のような事業者によるサービス提供を増やすことによって図られるべきものである。

(4)高級車の利用
審査請求人は、タクシー対応車中でも高級車の部類に属するトヨタのクラウンGパッケージやワンボックス・カー(ヴェルファイア)を、移送空間の心地よさを提供するために使用してきた(甲3)が、本件申請にかかる増車分はすべて新車として購入する予定であった。また、バリアフリー化のため、まだ普及していない国交省の推進するユニバーサル・タクシーを導入する予定もあった。

5.他要件の充足

(1)「審査基準」適合性
本件公示Ⅲ3(1)は、「審査基準に適合すること」を要件とする。
この「審査基準」とは、「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー事業を除く。)の許可申請の審査基準について(平成23年11月22日付け公示(平成21年9月30日一部改正))」である(本件公示Ⅲ1(1))。
これは一般旅客自動車運送事業の許可を得るための審査基準であり、本申請がこれを満たしていることは当然の前提である。なお、本件申請後に審査請求人に対する監査が行われたが、指摘事項はなかった。

(2)他の条件の充足
また、本件申請は、本件公示Ⅲ3(1)の掲げる他の条件(②運転者の確保状況、③実働率、④法令遵守状況)も充足する。
②運転者の確保状況は、1両当たり1.5人以上であることが要件となっているが、「増車届出に係る運転者名簿」が示すとおり、この要件を充足している。
③実働率は80%以上であることが要件とされているが、これについても、「経営及び運転者の労働条件に関する指標の目標及び実績」が示すとおり、この要件を充足している。
④法令遵守状況については、平成23年8月18日、監査を指摘事項なしでクリアしている。

第3 本件公示Ⅲ3(1)但書の「特別な事情」該当性

1.特別事情
本件公示Ⅲ3(1)但書は、増車の認可につき「基準……に適合するものに限り認可するものとする」とした上で、「基本方針の趣旨に照らし、特別な事情があると認めるものについては、この限りでない」とする。
この但書が、具体的にどのような場合に例外を認める趣旨であるかは、その文言のみからは必ずしも明らかではないが、本件公示Ⅲ3(1)の4基準を形式的に適用したのでは合理性を欠く場合があることから、特別事情がある場合、申請が本来の趣旨に沿うものであれば、例外を容認するものと考えられる。
この例外には、
①4基準を満たし、本来認可されるべきであるのに、例外的に認可すべきでない場合と、
②形式的に適用すれば4基準を満たさず、認可をすることはできないが、基本方針の趣旨に照らし、例外的に認可を与えるべき場合
の2つがありうる。
理論上はいずれの場合もありうるが、本件公示Ⅲ3(1)本文が4基準に適合するものに限り厳格な要件の下で認可するものとしていること、実際にも本件では極めて厳格な要件設定のためにこれまで1件も認可がされていない(増車申請さえ断念せざるを得ない)現状にあることに鑑みれば、但書は、①ではなく、むしろ②の場合を想定した例外と見るべきである。

2.基本方針 
国交省の定めた基本方針は、特定地域で生じている次の①ないし⑤の「諸問題の解決を図り、各地域においてタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにしていくことを」目標としている。
①タクシー事業の収益基盤の悪化
②タクシー運転者の労働条件の悪化
③違法・不適切な事業運営の横行
④道路混雑等の交通問題、環境問題、都市問題
⑤利用者サービスが不十分
したがって、個別事案における増車申請が、これらの問題を悪化させるものでなく、むしろ改善させるものであれば、基本方針の趣旨に照らし、上記但書にいう「特別な事情」ありと言えるはずである。

3.本件における特別事情の存在
本件申請については第2で詳述した通りであるが、これを上記基本方針の目標に照らし合わせると、次のことが言える。
①は、本件では外国人向けの新規需要に特化した増車申請であるために、他のタクシー事業者の収益基盤の悪化には繋がらない。むしろ、審査請求人のような良質なサービスを提供する優良事業者の収益基盤を強化する申請といえる。
②も、①と同様の理由から、他のタクシー運転者の労働条件の悪化には繋がらない。むしろ、タクシー業界では悪しき慣行として、一般にいわゆるa)足切りとb)累進歩率があるが、審査請求人はいずれも採用していない。
a)は一般的には例えば、売上高の60%が乗務員に支給されるが、足切りラインとして多い月額50万円(日額4万円)に売上げが届かない場合、乗務員の支給額が例えば48%に低下してしまうというルールである。これは売上減のリスクを使用者が負担せず、乗務員に負担させるものである。
b)は例えば、累進歩率として乗務員の支給額を60%と設定していても、売上が低い場合には支給率を段階的に下げていくルールである。これも、乗務員に売上減を負担させ、使用者が損をしない仕組みである。
これに対し、審査請求人は、a)及びb)のルールを採用していない。つまり、審査請求人は売上減のリスクは会社が負担すべきであると考え、「良質なサービスを提供しているか」という基準のみで歩率を管理する。すなわち、研修、接客サービス、クレームや事故の有無やお客様の声(エコーカード)等を踏まえて、良質なサービスを提供していると認められれば「ロイヤル資格」が乗務員に与えられ、歩率が上昇する。それ以外に、足切りもなく、累進歩率もない。審査請求人の乗務員は良質なサービスを競って提供し、ロイヤル資格を得て、それを維持しようとする。現在、審査請求人の乗務員の8割程度はロイヤル資格を得てこれを維持している。これが、審査請求人の、他には見られない良質なサービスを提供する基盤となっているのである。
以上からすれば、本件増車申請はむしろ、外国語や良質なサービスを提供できる乗務員の労働条件を改善する申請といえる。
③については、本件申請が認められても、違法・不適切な事業運営の横行とは関係がない。むしろ、タクシー業界ではよりよい労働条件を求めて人材の流動性が他業界に比べて高いところ、審査請求人の如き優良事業者の業容が拡大することで、適法適正な事業運営の拡大に資すると言える。
④の道路混雑等の交通問題、環境問題、都市問題については、本件申請とは直接の関係がなく、むしろ良質なドライバーが増えることで問題は部分的に改善されると言える。
⑤については、利用者サービスが不十分である現状を改善するためには、良質なサービス提供を企業理念とする審査請求人の本件申請が認容されることがむしろ望ましいと言える。
なお、以上に対しては「増車台数30台では直ちに影響がなくても、増車申請を認めることで、次々と増車を認めざるを得なくなり、結果として大きな影響が及びかねない」という指摘も予想される。しかし、実際には審査請求人以外のほとんどの事業者は特に労働条件の面で法令遵守ができていないため、本件公示の4基準を満たす事業者は稀であり、そのような事態にはならない。現在の新規参入障壁は、審査請求人の如き優良事業者の事業拡大に限って許容するものとして運用されるべき(単なる減車による競争排除では決して良質なサービスが生まれない)ものであり、そのような運用こそが上記5つの問題改善にとって適切なのである。
以上より、たとえ形式的に見て、需要発生が「明らかである」とまでは言えず、本件申請が収支計画要件を満たすとは言えない場合であっても、公示Ⅲ3(1)本文但書にいう「特別な事情」が認められるから、本件申請は認容されるべきである。
 

第4 本件公示の違法(道路運送法6条2号の充足)
以上のとおり、本件認可申請は本件公示に基づき認容されるべき(本件申請拒否処分は違法)であるが、仮に本件公示によれば認容されるべきでないとしても、以下に述べるとおり、本件公示は違法であり、本件認可申請はなお法6条各号の要件を満たし、認容されるべきである。

1.特措法の趣旨

(1)特措法3条1項の構造
特措法3条1項によれば、国土交通大臣は、
特定の地域において、一般乗用旅客自動車運送事業についての
供給過剰(供給輸送力が輸送需要に対し過剰であること)の状況、
②事業用自動車一台当たりの収入の状況、
法令の違反その他の不適正な運営の状況、及び
④事業用自動車の運行による事故の発生の状況
に照らして、
①当該地域の輸送需要に的確に対応することにより、
輸送の安全及び利用者の利便を確保し、
③その地域公共交通としての機能を十分に発揮できる
ようにするため、当該地域の関係者の自主的な取組を中心として、
一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは、当該特定の地域を、期間を定めて特定地域として指定する、ものとされている。

(2)特措法・道路運送法の趣旨
 特措法3条1項及び同法1条の文言からも明らかなように、特措法はあくまで「事業の適正化及び活性化」の推進を目的としており、一律の増車禁止、新規参入禁止を徹底して図る趣旨ではない。
 さらに特措法は、道路運送法を部分的に修正する特別法であるところ、本件認可処分については、当然に一般法たる道路運送法の趣旨が及ぶから、同法の目的に従って、特措法の規定も解釈されねばならない。

すなわち道路運送法は、
①道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、並びに
②道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進する
ことにより、
①輸送の安全を確保し、
②道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに、
③道路運送の総合的な発達を図り、
もつて公共の福祉を増進することを目的としており(1条)、6条はこれを具体化した規定である。
 特に輸送需要への的確な対応、利用者の利便の確保、利用者の需要の多様化・高度化への的確な対応、サービスの円滑かつ確実な提供の促進によって、利用者の利益の保護・増進を図るためには、適度な競争状態下で、良質なサービスを提供しうる事業者の育成と発展が不可欠である。
 したがって、本件公示ないしその運用が、実質的に見て特定地域における一切の増車を禁止するものであるならば、それは、特措法1条・3条1項、さらには道路運送法1条・6条に反し、違法である。

(3)交通政策審議会(答申)
以上のことは、特措法制定の前提となった交通政策審議会「タクシー事業を巡る諸問題への対策について」(平成20年12月18日)(以下「答申」という)からも裏付けることができる(以下、強調は引用者)。
すなわち、答申は
悪質事業者の参入や事業拡大を未然に防止する観点から、現行の参入時の許可要件や審査手続、増車時の手続などについては厳格化すべきである。としており、良質な事業者についてはその事業拡大を禁止することを求めていない。そして、要件・手続の厳格化を求めているに過ぎず、増車を禁止する趣旨ではない。

 このことは、この文章のすぐ後に、
[例]
・経営者の法令知識確認
・適切な事業運営のための体制・設備の確保、そのために必要な車両規模の設 定
・審査における現地確認の徹底、運輸開始時の確認 等

として、悪質事業者の排除を求める具体的な方法を例示していることからも分かる。これらの方法によって増車の要件や手続を厳格化することを求めているのであり、本件公示が要求する如き曖昧で不明瞭な新規需要発生要件の設定を求めているものではない。

 また、答申は、「問題への取組みにおいて留意すべき視点等」として、
供給過剰の進行により深刻化している諸問題への対策を講じる場合、様々な問題の背景にある根本的な問題である供給過剰への対応を行うことはやむを得ないものと考えられるが、一方で、例えば、新規参入や増車に伴い個々のタクシー事業者の自由な営業活動や競争の中から事業者の創意工夫が促され、それが消費者利益の増進につながり得ることにも留意する必要がある。
として、消費者利益の増進の観点から、良質な事業者による増車や新規参入の必要性をはっきりと指摘してもいるのである。

 特に基本車両が十台から数十台のベンチャー企業にとっては、増車を禁止されたのでは、企業として発展することができず、まして減車をさせられたのでは、事業を維持することさえ困難であり、実際に廃業している新規小規模事業者が出始めている。他方で、東京では大手事業者が次々と中小事業者を買収し、寡占状態になり始めている。

 特措法は、旧態依然とした大企業を守り、良質なサービスを提供して発展しようとする意欲あるベンチャー企業を潰すという趣旨では全くないはずである。

 さらに、答申は、「供給抑制」について、
一層の供給の増加により更なる労働条件の悪化など諸問題が深刻化することを防止し、地域の公共交通機関としてのタクシーの機能の維持・活性化を図るための総合的な取組みを効果的に実施することができるよう、タクシー維持・活性化総合計画が実施されている期間に限り、他の地域に比べ、供給の増加すなわち新規参入や増車を、必要な限度で、かつ、有効に抑制する必要がある。このため、新規参入及び増車について、他の地域に比べ、許可等の基準・要件及びその審査を厳格化すべきである。
と述べており、一律に増車の禁止を求めているものではない。

以上の通り、特定地域であっても、増車はあくまで「必要な限度で」抑制されるにとどまり、実質的に一切の増車を禁止するような審査基準が設定され、あるいはそのような運用がされるとすれば、それは特措法の趣旨に照らし違法である。

(4)減車強制の独占禁止法・平等原則違反
 この点、本件公示による実質的な増車禁止と軌を一にする形で、本件公示による強制に近い誘導(減車した事業者に対する監査、行政指導の緩和の特例、増車している事業者に対する行政処分の特例)がされると共に、特措法の協議会の下、「自主的な」一律減車がされつつあるのは公知のとおりである。しかし、これら一連の増車禁止(本件公示を含む)・減車合意は、独占禁止法の数量カルテル(不当な取引制限)に該当するおそれがあり、独禁法の趣旨に照らしても大いに問題があると言わねばならない。
 この点、参考になるのは、平成23年12月21日、新潟交通圏においてタクシー会社が一律に運賃を値上げしたことについて、公正取引委員会が排除措置命令及び課徴金納付命令をした事例である(甲4)。これは価格カルテルであるが、増車禁止(本件公示を含む)・減車合意も需給関係を一方的に操作するものとして数量カルテルに当たり、独禁法違反である。

 なお、上記のような、増車事業者に対する監査、行政指導、行政処分を強化し、他方減車事業者に対しては緩和するという取扱い(本件公示Ⅳ)は、合理的な区別であるとは言えず、平等原則違反、行政手続法32条2項違反の疑いがある。
 
2.本件公示Ⅲ3(1)①(収支計画)の運用の違法
 本件公示では、収支計画適合性が要求されているが、実質的に見てほぼすべての増車申請を認めない趣旨として厳格に運用されるならば、上記のとおり、特措法・道路運送法の趣旨に反し、本件公示の運用は違法である。
 本件申請については第2記載の通りであり、本件申請さえ認められないとすれば、ほぼすべての増車申請が拒否されることになりかねない。報道等によると、特措法の施行後、増車申請が認められたケースは皆無であり、厳しすぎる基準設定のために増車申請自体が抑制されるに至っており、実際上、特定地域では一台も増車が認められていない。
 さらに、救済規定としての上記第3の特別事情も認められないのであれば、かかる審査基準の運用は法の趣旨に反し違法である。

3.収支計画適合性要件の違法
 本件公示の収支計画適合性要件は、需要発生が「明らかである」ことを求めている。
しかし、一民間事業者に過ぎない申請者がこれを厳密な意味で立証することは、その限られた組織、人員、資力からして、実際上極めて困難である(実際、審査請求人が本件申請について補正を求められた際、これを立証するために「どのような資料を提出すればよいか」を担当者に確認したところ、担当者によれば、立証する方法は「分からない」とのことであった)。
 かかる審査基準は、実際上すべての増車認可申請を拒否するに等しいものであるから、上記のとおり、特措法及び道路運送法に照らし、それ自体が違法である。

4.まとめ
 以上からすると、本件公示Ⅲ3(1)①の収支計画適合性要件の運用、あるいは当該要件設定自体が違法であるから、増車認可申請がこれを充足しない場合であっても、上記基本方針の趣旨に適合するものであれば、増車申請は認可されるべきであり、申請を拒否することは違法というべきである。
 そして、上記のとおり、本件申請は上記基本方針に適合するから、申請は認可されるべきであって、申請を却下した本件処分は違法であり、取り消されるべきである。


第5 本件処分の不当性
 以上では、本件処分の違法性について述べたが、本件の裁量権行使については少なくとも不当であるといえるから、不当な処分として取り消されるべきである。
 

第6 特定地域指定の違法について
 本件特定地域の指定は、特措法3条1項各号の要件を満たさないにもかかわらずされたものであり、本来、違法である。したがって、本来的には、本件申請については、特措法15条1項が適用されず、本則の道路運送法15条3項により、届出のみで増車が可能であった。

 司法救済においては、本件特定地域の指定が違法であることを理由として、本件認可を得なくても本件申請にかかる増車をなしうる法的地位の確認の訴えを提起しうるのに対し、本審査請求では、認可申請に対する拒否処分を争うことしかできないと考えられるため、「審査請求の趣旨」記載の審査請求をするにとどめるが、これが本件特定地域の指定が適法であることを前提とする審査請求ではないことを付言しておく。

以上

証拠方法

甲第1号証 東京国際空港定額運賃輸送実績集計表
甲第2号証 ホームページ(観光庁)
甲第3号証 ホームページ(審査請求人)
甲第4号証 新潟市等に所在するタクシー事業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について



※原文のままですが、ブログ掲載のため
強調の傍点を付けられた文字は赤文字に、
カコミのあった文字は青文字にしております。
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