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T君の道草

毎月10日・25日発行

タクシー日本新聞社

編集長の道草

ロイヤルリムジン増車却下取り消し訴訟・被告(国)の準備書面2




ロイヤルリムジン(金子健作社長、東京都江東区、50台)による
タクシー30台の増車却下は違法として、
国を相手取って増車却下処分の取り消しと増車認可、
そして国に増車認可の義務付けを求めた裁判の第5回口頭弁論が3月7日、
東京地裁民事第二部第703号法廷で行われた。

今回は被告(国)が3月1日付けに提出した
仮の義務付け申立事件に対する意見書(3)の全文を、
2回に分けて公開する。


※※※※※※※※※※以下、被告の意見書書面※※※※※※※※※※
(ブログの設定上、文字が左寄せ配置になっております)

平成24年(行ク)第270号 仮の義務付け申立事件
申立人  ロイヤルリムジン株式会社
相手方 国(処分行政庁:関東運輸局東京運輸支局長)

意見書(3)
平成25年3月1日

東京地方裁判所民事第2部 御中


 相手方は,本意見書において,申立人の平成24年12月28日付け意見書2(以下「申立人第2意見書」という。)に対し,必要と認める限度で反論する。
 なお,略訴等は,本意見書において新たに用いるもののほか,従前の例による。

第1 特措法による供給過剰対策及び収支計画要件には必要性,合理性が認められること

1 はじめに
  申立人は,措置基準Ⅲ3(1)に定める収支計画要件は「実際には増車を一律に禁止する需給調整規制と言うはか」なく(申立人第2意見書4ないし6ページ),措置基準は違法であるなどと主張し,同主張を根拠づけるものとして,井手秀樹教授(疎甲第37号証)及び古城誠教授(疎甲第40号証)作成の各意見書を提出するようである。

 この点,供給過剰対策及び収支計画要件の必要性,合理性については相手方意見書(1)第3の2(21ないし38ページ)で,また,収支計画要件が平成12年改正前の需給調整規制とはその性質を異にするものであることは相手方の平成24年11月26日付け意見書(2)(以下「相手方意見書(2)」という。)第1(3ないし8ページ)でそれぞれ詳論したとおりであるが,これらに加えて,以下に述べるような特措法の立法経過等を併せれば,供給過剰対策及び措置基準として収支計画要件が設けられたことに十分な必要性,合理性があることは,より一層明らかである。

 以下,詳述する。

2 特措法による供給過剰対策の意義
(1)タクシー事業を巡る諸問題の発生とその原因について
法は,平成12年改正により,緊急調整措置や,その予防措置としての運用上の特別監視地域等の指定制度が創設されたが,これらの指定制度は事態の悪化の防止を図ることを目的としており,事態の改善を図ることを目的としたものではなかったため,上記の各措置だけでタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できないという状況を解消することは困難であった。

 以下,上記の点に関し,交通政策審議会において指摘ないし確認されたタクシー事業を巡る諸問題について,その概要を述べる。

ア タクシー事業を巡る諸問題の主たる原因がタクシーの供給過剰にあること
 交通政策審議会の答申では,以下のとおり,タクシー事業については,地域により運転者の労働条件の悪化等の諸問題が発生していたところ,取り分け,タクシーの輸送人員の減少及び過剰な輸送力の増加が相まって生じる供給過剰が,これらの諸問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘された(疎乙第11号証3ないし5ページ)。

「Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生
現在のタクシー事業については,地域によって状況や程度は異なるものの,一般的に,以下のような問題が生じている。

①タクシー事業の収益基盤の悪化
タクシーの輸送人員が多くの地域で年々減少し,収入も減少している一方で,燃料費をはじめとする経費は増加しており,タクシーの実質的な収益基盤は悪化している。

②運転者の労働条件の悪化
タクシー運転者の資金等の労働条件は,長期的に悪化傾向にあり,他産業に比べて非常に低い水準となっている。貸金の低下は,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指摘されている。また,若年労働者の就職意欲を減じる要因ともなっており,結果的にタクシー運転者の著しい高齢化が進んでいる。

③適法・不適切な事業運営の横行
過度な長時間労働や最低賃金法違反,社会保険・労働保険の未加入,不適切な運行管理や名義貸しによる経営など,コンプライアンスの見地から問題のある事例が生じている。

④道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題
多数のタクシー車両が繁華街や鉄道駅等に集中する結果,周辺の道路混雑や歩行者との交錯が生じ,地域における円滑な交通の確保という観点から看過し得ない状況が生じている事例がある。これらの問題は,良好なまちづくりなどの都市政策にも悪影響を及ぼしているほか,車両の無駄な空車走行等による燃料消費は,環境問題への対処という視点からも問題である。

⑤利用者サービスが不十分
サービスの多様化や実車率の向上等の経営効率化が不十分である中で運賃が上昇するなど,規制緩和の効果が十分に発現せず,利用者の利便の増進が十分に達成されていないとの指摘がある。また,そうした問題以前に,接客態度が不良,地理が不案内といったサービス産業としての基本が欠けているという指摘も依然として多い。
①から⑤までで述べたこれらの問題は,タクシーが,Ⅱ(引用者注:「Ⅱ タクシーの役割と検討の視点」の項のこと)で述べたような我が国の地域公共交通の分野で担うべき重要な役割を適切に果たしていく上で障害となっている。また,これらの問題は,いずれも,最終的にはそれぞれの地域で暮らす消費者に不利益を及ぼすものと考えられ,看過できない。

したがって,こうした状況に対処し,それぞれの地域においてタクシーの機能を安定的に維持・活性化していくためには,これらの諸問題の発生の原因を明らかにした上で,これに的確な対策を講じていくことが必要である。

Ⅳ 諸問題の原因
タクシー事業を巡る諸問題は,いくつかの原因が複合して発生していると考えられるが,その原因を大きく分けると,以下の点が挙げられる。

また,以下に掲げる原因のうち,とりわけ,①,②の原因が相まって生じる供給過剰は,これらの問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘されている。

①タクシーの輸送人員の減少
地域によって事情は異なるものの,一般的には,自家用車の普及,鉄道・バスなどの都市交通の整備,運転代行業等との競合,人口減少などの要因によって,多くの地域でタクシーの輸送人員が減少しており,このことが,タクシー事業の収益基盤の悪化等を招く大きな原因となっている。

②過剰な輸送力の増加
多くの地域では,需要が減少しているにもかかわらず,供給が増加し,又はその規模が維持されており,その結果,車両1台当たりの収入の低下や都市規模を超えた車両数の増加を通じて,Ⅲ(引用者注:上記「Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生」の項のこと)で述べた諸問題の深刻化を招いている。
(以下省略)」

イ 供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があると認められること
前記アのとおり,タクシー事業においては,輸送人員の減少と過剰な輸送力の増加が相まって供給過剰が生じ,これにより,タクシー運転者の賃金が低下し,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指摘されていた。

この点,交通政策審議会においても,供給過剰による過当競争が生じると実車率が落ち込むことになり,供給過剰の度合いが高まるにつれ,タクシーの車両100万キロメートル当たりの事故発生件数が増加するというデータが示されていた(疎乙第24号証)のであって,供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があるといえる。

ウ 緊急調整措定は最終的な措置として存置されたこと
法は,供給過剰に対する対策として緊急調整措置の制度を定めているところ,交通政策審議会においては,緊急調整地域の指定について,5年前から既に供給過剰状態で,その後の変化がそれほど大きくない地域は指定されないこと,長期にわたって緩やかに実車キロや営業収入が減少している地域は指定されないこと,実際に事故が多発しなければ指定されないことなどの批判的な意見があることが指摘されていた(疎乙第25号証)。

このような批判を踏まえ,交通政策審議会の答申においては,緊急調整措置がいわば権利制限性の強い規制であることに鑑み,「法に基づく現行の緊急調整措置は,著しい供給過剰が生じている場合に,供給が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認められるときに,事態の更なる悪化を防止するための非常手段として設けられているものであるが,上記のような特定地域指定制度を設けたとしても,それとは目的を異にするものとして,輸送の安全と旅客の利便を確保するための最終的な措置として,引き続き存置しておくことも必要」(疎乙第11号証15ページ)としつつ,「供給過剰の進行によりタクシー運転者の賃金が低下傾向にあるといったように,特定の指標が一定期間を通じて悪化している地域を優先的に指定し,そうした地域の問題に歯止めをかけ,その改善を図ることとす」る特定地域指定制度の創設が提唱され(疎乙第11号証14ページ),緊急調整措置についても,最終的な措置として存置する必要があることが確認された。

エ 国会での議論
内閣は,前記イ及びウの経緯等を踏まえ,「特定の地域における輸送需要及び当該地域の状況に応じた一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進するため…道路運送法の特例等について定める必要がある」として,特措法(政府案)を第171回国会に提出した(疎乙第26号証8ページ)。

これを受けた国会における特措法(政府案)の審議過程等においても,以下のとおり,供給過剰による輸送の安全や利用者利便が低下することを懸念する議論がなされていた。(ア)菅原一秀議員は,平成21年5月22日に開かれた衆議院国土交通委員会において,平成20年「7月に,いわゆる特定特別監視地域を大変数多く指定して,…一定の効果が見込めるんだろう,こう思うわけでありますが,それでも今回の法案に至ったということは,昨年の7月からの特定特別監視地域,この地域指定によってどれだけの効果があって,その上でこの法案の…特定地域を設定して,さまざま努力をするということにつながるのか」と質問し(疎乙第27号証13ページ),川崎稔議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「従来の特別監視地域あるいは特定特別監視地域…による対応と今回の特措法との関係…についてはどうな」つているのかと質問した(疎乙第30号証35ページ)。

また,川内博史議員は,同年6月9日に開かれた同委員会において,「事業者の皆さんやドライバーの皆さんが規制緩和をする前におっしゃっていたことが現実のものになりましたねということ…事業者とドライバーが言っているとおりの,交通事故がふえますよ,そんなことをしたら交通事故がふえるんです,労働条件は悪化して大変なことになりますということをみんなが言っていた」と指摘した(疎乙第29号証25ページ)。

これらの質問等に対して,本田勝政府参考人(当時の国土交通省自動車交通局長,以下「本田参考人」という。)は,「現行法のもとで,できる限り安易な供給拡大を抑制するという見地から,特定特別監視地域制度,この大幅な見直しを行い,百九地域を指定させていただいて,供給抑制のための措置を講じて」いるが,「あくまでもこれは現行法の範囲内ということでございまして,やはりケースによっては,供給過剰地域であるにもかかわらず,新規参入に係る申請を却下することができない,あるいは増車についても行政指導にとどまらざるを得ない,そういった制度上の限界はある」(疎乙第27号証13及び14ページ)ことや,「今回の問題の発端となっておりますとおり,地域によっては需要が減っているにもかかわらず供給が増えてしまう,そのことによってそこで働くドライバーの方々の労働条件が年々悪化する,そういったことに対応するために,現在の道路運送法を当然前提にして,行政運用としてできる限り供給を抑制し,かつタクシーを良くしていく,そういった試みを行政運用としてやらせていただいておりますのが特別監視地域,さらには特定特別監視地域といった制度で」あるが,「供給過剰が著しいために,例えば40両の新規参入しか認めないと私どもが申し上げたところで,その40両以上の新規参入に対してそれを拒否する理由は道路運送法には今ございません。・‥したがって,これらの問題についてはやはり現在の道路運送法では対応できないということで,新たな立法措置として今回の法案をお願いし,その中での特定地域につきましては法律に基づいて新規参入や増車について抑制できる,そういった法的根拠を置いていただきたいと,これが2つの制度の関係でございます。」(疎乙第30号証35ページ),「規制緩和を実施させていただく際に,・‥御 指摘のとおりの懸念があったことは事実でありますし,地域によって状況の差はありますけれども,需要が低迷する中で車両が増加するといった事態で,その結果,懸念されておりました労働条件の悪化あるいは交通事故の増加といった現象が生じたのは事実であり…単に市場に多少の手を加えるだけではこの問題の解決は済まない,…そういった規制を見直すということも含めて今回対策を講じたいというのが,この答申に基づく我々の考え方でございます」(疎乙第29号証25ページ)などと答弁した。

(イ)また,三日月大造議員は,平成21年6月9日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「今回,供給過剰の状態と運賃の問題に対処しなければならない一つの理由として,タクシーの事故がふえているし,減らない,他の事業用自動車に比べて多いという問題がありました。どれぐらいの事故が発生をしているのか。」と質問し(疎乙第29号証15ページ),米長晴信議員も,平成21年6月18日に開かれた参議院国土交通委員会において,「安全に問題が生じるということで・・・国土交通省さんの作った資料で需給状況と事件件数のグラフ(引用者注:疎乙第24号証のグラフのこと)があり…,これは私が見る限り,台数あるいは空車で走っている量が多ければ多いはど事故の発生件数が増えているいうようなふうに読み取れるんですけれども,この相関関係はいかが」かと質問した(疎乙第31号証32及び33ページ)。

これらの質問に対して,本田参考人は,「タクシーの事故の問題でございますが,まず,警察庁の統計に基づきます平成二十年のタクシーの交通事故件数は,全国で二万四千三十件でございました。この状況を他のものと比較いたしますと,まず,全自動車事故に比べて,ここ数年の状況については,タクシー事故の減少の歩みが非常に鈍いという特徴がございます。さらに,数値的に申しましても,同じ走行距離当たりの交通事故件数で見ますと,タクシーの場合には,残念ながら,全自動車の平均の約一・八倍という事故発生率になって」おり(疎乙第29号証15ページ),また,「日車実車キロといった指標による需給関係の悪化と事故件数の悪化…というのは,統計上,明白な相関関係がある」と答弁した(疎乙第31号証33ページ)。

そして,この答弁に対しては,米長晴信議員も,「私は国土交通省のこの表の見方が妥当なんじゃないか」と指摘していた(疎乙第31号証34ページ)。

(2)安易な供給拡大に対する抑制策について
前記(1)エで述べた議論と共に,これと表裏一体のものとして,以下に述べるように,特定地域での新規参入,増車の歯止めの方策及びその方針についても国会で論議がされた。

ア 福井照議員は,平成21年6月5日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「新規参入を含めて,安易な供給拡大,これはもう厳に抑制すべきだと思いますけれども,その方策,その方針,どのようにされるのか」と質問し(疎乙第28号証13ページ),また,羽田雄一郎議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「タクシーが供給過剰な地域を特定地域と指定した場合の運用方針について」どのようなものとするのか質問した(疎乙第30号証18ページ)。

イ これらの質問に対して,本田参考人は,「法案(引用者注:特措法(政府案)のこと)におきましては,国は,特定地域においては,タクシー事業の適正化を推進するため,道路運送法に基づく処分,この中には,当然新規参入の許可,あるいは今回特定地域で導入させていただきたいと考えております増車の認可といった処分がございますが,これを的確に実施するという条文がございます。したがって,特定地域においては安易な供給拡大は国として厳に抑制すべきであると考えておりまして,新規参入あるいは増車の申請に対しては,原則としてこれを認めないという運用をさせていただきたいと考えております。」(疎乙第28号証13ページ),「本法案におきます特定地域は,タクシーの供給過剰が進行し,それに伴ってそこで働いておられます運転者の方々の労働条件が悪化していく,したがってこれ以上の供給の増加を抑制する,こういう見地から,今後の運用に当たっては,新規参入あるいは増車というものについて,原則,厳しく抑制させていただく」などと答弁した(疎乙第30号証18ページ)。

(3) 小括
以上のとおり,特措法は,交通政策審議会の答申において,タクシー事業を巡る諸問題を一層深刻化させる大きな原因であると強く指摘されたことを受け,供給過剰の状況の解決を図るために,前記(1)及び(2)のような国会での議論を踏まえて,衆・参両議院ともに全会一致で可決,成立したものである。
このような経過に照らせば,タクシー事業における供給過剰対策を講じる必要性,合理性は十分に認められ,これを実現することこそが特措法の本旨に適うというべきである。

3 収支計画要件を設けたことに合理性があること
(1)収支計画要件の必要性
前記2のとおり,特措法は,その立法過程において,特定地域における新規参入や増車申請について,安易な供給拡大は厳に抑制する必要があることが議論された上で制定されたものである。

 すなわち,タクシー事業を巡る諸問題の大きな原因と指摘された供給過剰の構造は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,地域で需要が減少しているにもかかわらず供給が増加しているということにほかならないところ,特定地域における安易な供給拡大は,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下をもたらすものであるから,厳格に抑制することが求められているといえる。

 しかして,収支計画要件は,増車車両分の営業収入が申請する営業区域内で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めるものであるところ,増車により得られると見込まれる増収が,収支計画要件がいうところの当該地域における新規の輸送需要ではなく,既存の輸送需要に拠っているにすぎない場合にまで増車を認めてしまえば,既に供給過剰状態にあるとして特定地域に指定された営業区域内にさらにタクシーを増車させてしまうことになるのであって,このような対応は,上記に述べた特措法の趣旨・目的に明らかに違背する。

 それゆえ,特措法の趣旨・目的を実現するためには,措置基準の一要件として収支計画要件を設けることは必須というべきである。

(2)収支計画要件の合理性
ア 「新たに発生する輸送需要によるものであること」について
(ア)処理方針
相手方意見書(1)第3の2(4)(34ないし38ページ)で述べたとおり,措置基準は,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するとの観点から,増車の認可申請に対する審査を厳格に行うことを定めたものであり,このうち,収支計画要件は前記(1)の必要性を踏まえ,措置基準における増車認可申請に対する審査基準の一つを定めたものである。

すなわち,前記1で詳論したようなタクシーの輸送人員の減少と相まって地域で需要が減少しているにもかかわらず,タクシーの供給が増加しているという供給過剰の構造や,供給過剰が進行している地域における対策の基本的な考え方を踏まえれば,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するためには,増車申請の当否を判断するに際し,当該増車車両が当該地域で過剰な輸送力の増加とならないかといった観点からの検討が必要となるのは当然のことといえる。

(イ)新たな輸送需要は,申請者のみならず,当該特定地域においても認められることが必要であること
前記1(1)アで述べた供給過剰の構造を踏まえると,増車申請があった場合,増車車両が地域で過剰な輸送力の増加とならないようにするためには,まずもって,輸送需要に適合しない過剰な供給(輸送力)とならないようにすることが重要である。

しかるに,供給過剰は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,過剰な輸送力が生じている状態をいうから,増車車両が輸送需要に適合した輸送力であったとしても,当該増車車両分の営業収入の増加が,当該地域内の既存の輸送需要を獲得することで得られるにすぎないのであれば,増車申請を認可してしまえば,むしろ供給過剰を助長することになり,ひいては,特措法の趣旨,目的に反することになる。

そうすると,供給過剰の構造を踏まえた輸送需要に適合した輸送力といえるためには,増車車両が,当該地域内の既存の輸送需要に適合したものであるとともに,新たに発生する輸送需要に適合した輸送力であるといえなければならない。

この点,相手方意見書(2)第3の3(10及び11ページ)で述べたとおり,収支計画要件を含めた措置基準は,法15条2項で準用する法6条2号の適合性を判断するための認可基準として定められたものであるから,特定地域に係る増車申請が収支計画要件を満たすというためには,申請者である事業者にとって輸送需要が新たに発生するものでなければならないことは当然の前提であるが,上記の理によれば,それだけにとどまらず,当該地域で新たに発生する輸送需要によるものであることが必要と解すべきである。

イ 上記アの輸送需要であることが明らかであること
 収支計画要件は,増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めている。

 すなわち,収支計画要件は,タクシーの供給過剰により輸送の安全確保や利用者の利益の保護に弊害が生じる危険牲が高い特定地域において,増車車両が,それらの弊害を生じさせることなく適切に事業を遂行できるか否かを厳格に審査するための要件であるから,当該営業区域で新たに発生する輸送需要であるかどうかは,申請者によって,一義的に,すなわち,誰の目にも明らかな程度に客観的かつ合理的に明らかにされなければならないというべきである。

ウ 小括
 以上によれば,収支計画要件は,特定地域における増車申請の審査基準として,特措法の趣旨,目的に適うものであって,合理性を有するというべきである。
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ロイヤルリムジン増車却下取り消し訴訟・被告(国)の準備書面2



ロイヤルリムジンが国に増車却下処分の取り消しと増車認可、
増車認可の義務付けを求めた裁判の、
被告(国)が3月1日付けに提出した
準備書面の全文の2回目。

※※※※※※※※※※以下、被告の準備書面※※※※※※※※※※


第2 その余の原告の主張に対する反論

1 井手教授らの意見に依拠した原告の主張に理由がないこと

(1)原告は,収支計画要件は平成12年改正前の需給調整規制と同様のものであり(甲第37号証1ページ),あるいは,需給調整規制のための基準である(甲第40号証13ページ)と主張するようである(原告第2準備書面5及び6ページ)。

 しかしながら,被告準備書面(2)第1の2(1)及び(2)(4ないし6ページ)で述べたとおり,平成12年改正前の需給調整規制は,供給過剰地域であるか否かに関わらず,需要に対して適切な車両数を算出して,それに基づき増車の当否を判断するというもので,いわば需要と供給の均衡を行政が直接的に調整することによって,道路運送に関する秩序を確立することを目的とするものであって,供給輸送力に着目した規制であったといえる。

 これに対し,収支計画要件は,既にタクシーの供給が過剰状態にある特定地域における営業区域内での増車申請の当否を判断するに当たり,増車車両分の営業収入が新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを要件とするものであり,新規輸送裾需要の有無に着目した基準といえるから,この点において,従来の需給調整規制とはその性質を異にしている。

 また,収支計画要件は,従来の需給調整規制の目的とは異なり,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止し,もって輸送の安全や利用者の利益の保護を目的とするものであるから,この点においても,従来の需給調整規制とは異なる。

 したがって,収支計画要件と従来の需給調整規制とを同一,同質のものとする原告の主張は理由がない。

(2)また,原告は,「タクシー事業者が明らかな新規需要を立証できない限り増車を認めないとする政策には,経済学的な合理性が全くない。」(甲第37号証17ページ)と述べるようである。

 しかしながら,繰り返すように,収支計画要件は,供給過剰の状況にある特定地域において,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止するために定められたものであり,需給調整規制によって適切な車両数を経済学的に算出するためのものではないから,収支計画要件に「経済学的な合理性が全くない。」との原告の指摘は単なる政策的意見にとどまるばかりでなく,収支計画要件の意義,目的を正解しないものといわぎるを得ない。

 さらに,原告は,「需給調整規制を行うには,法律の明文の根拠が必要であり,明文の根拠がないのに,(中略)需給規制を根拠づけることは許されない。」(甲第40号証14ページ)などと述べる。 

 この点,収支計画要件は需給調整規制と同一ではないから,原告の上記主張はその前提において理由がないが,この点をおくとしても,被告準備書面(1)第3の2等において述べたとおり,措置基準は,法15条2項が準用する法6条の許可(認可)基準適合性を判断する上で考慮すべき要素を具体的に掲げた審査基準であり,特定地域における新規の増車等に係る事業認可等については,安易な供給拡大を抑制し,認可処分,審査の厳格化を図るという前述の基本方針の定めを反映させたものであり,収支計画要件も,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止する観点から,増車による需要増が明らかに見込めるもの以外は原則としてこれを認めないこととして淀められた特措法15条の趣旨に沿うものであって,法の目的とする輸送の安全の確保や道路輸送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るために定められた基準といえる。

 それゆえ,収支計画要件を設けたことにつき,「法律の明文の根拠がない」などとはいえない。

2 日車営収からみれば,特別区・武三交通圏は他の地域ほど供給過剰にはないとの主張について

(1)原告は,特別区・武三交通圏における実働1日1車当たりの運送収入(日車営収)は,平成13年度以降,「常に4万円を超えており」(乙第25号証),物価水準を考慮に入れたとしても,他の交通圏に比べて「ずば抜けて高い運送収入を上げ続けており,今後もこの傾向に変化の兆しは見られない。」として,特別区・武三交通圏は,「少なくとも他地域におけるほど,供給過剰ではないということを意味して」おり,「本件で,原告の増車申請を認めても何ら問題が無いことは,(中略)一目瞭然である。」と主張する(原告第2準備書面4ページ)。

(2)しかしながら,ある地域(交通圏)が供給過剰の状態にあるか否かは,飽くまで当該地域(交通圏)ごとに検討,判断されるべきものであって,他の地域(交通圏)との比較において検討,判断されるものではないから,原告の上記主張は,その前提において理由がない。

 上記の点をおくとしても,確かに,平成13年度以降の特別区・武三交通圏における実働1日1車当たりの運送収入(日車営収)は,いずれも4万円を超えている。しかし,一方で,年ごとにみた日車営収の推移は減少傾向にあり,取り分け,平成21年度以降については,従来の需給調整規制が行われていた平成13年度と比べて1万円前後も減少している。さらに,実車率,運送収入及び実働1日1車当たり実車キロ(日車実車キロ)についてみても,平成13年度以降の数値は減少傾向にあり,あるいは平成21年度以降の落ち込みは顕著である。例えば,被告準備書面(1)第3の3(38ないし40ページ)で述べたとおり,特別区・武三交通圏における平成20年度の日車実車キロ及び日車営収は,いずれも平成13年度の値を10パーセント以上下回っており,上記のとおり,平成21年度以降のこれらの数値は更に下回っているのである。

 以上からすれば,平成13年度以降の数値だけを捉えて特別区・武三交通圏が他の地域ほど供給過剰の状況にはないなどとはいえない。

3 引用裁判例に係る主張について
(1)原告は,東京高等裁判所平成24年7月11日判決(乙第23号証,以下「東京高裁平成24年判決」という。)を一部引用した被告の主張(被告準備書面(2)7及び8ページ)について,東京高裁平成24年判決では,特措法の下での需給調整規制の可否について何も判断されておらず,また,収支計画要件は増車を直接的に規制しようとする需給調整規制であり,法及び特措法の安全確保等の目的は措置基準の他の要件により確保しうることから,同判決に照らしても,収支計画要件は正当化し得ない旨主張する(原告第2準備書面6ないし8ページ)。

(2)しかしながら,被告は,東京高裁平成24年判決のうち,平成12年改正の趣旨を引用した上で,収支計画要件が,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止する観点から定められたのであり,法の目的に沿うものである旨主張しているのであって,原告の上記主張は,被告の主張を正解しないものである。

 また,東京高裁平成24年判決は,増車変更が法に基づく届出制であることを前提として,特別監視地域における行政処分を加重することが,「増車自体を直接的に規制するものではないことを考慮すれば…平成12年改正の趣旨に反すると認めることはできない」(乙第23号証15ページ)と判示したものであり,特措法において特定地域に係る増車変更の規制が認可制とされたことを前提としたものではないから,この点においても,原告の上記主張は東京高裁平成24年判決を正解しないものというほかない。

 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠き失当である。

4 輸送の安全性の確保に係る主張について
(1)原告は,「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(平成23年度)」(乙第24号証)によれば,規制援和により交通事故が増加し,安全性が失われたという事実はないから,安全性確保の観点からの増車規制には合理性がなく,上記データに照らしても,輸送の安全性確保と増車規制との間に有意な関連性はない旨主張する(原告第2準備書面7及び8ページ)。

(2)この点,上記報告書によれば,全国のタクシーの総事故件数は,平成17年までは増加傾向にあったものの,平成18年以降は減少していることが認められる。しかし,その一方で,重傷事故及び死亡事故の各件数は,平成18年以降もほぼ横ばいか,減少の歩みが鈍い状況にある(乙第24号証41ページ等)。

 また,前記第1の2(1)エ(イ)で述べたとおり,特措法の立法過程における国会での議論においても,本田参考人は,平成20年当時のタクシーの交通事故の件数は,他の自動車事故に比べて,減少の歩みが非常に鈍いという特徴があること,数値的にみても,同じ走行距離当たりの交通事故件数は,タクシーの場合は全自動車の平均の約1.8倍という事故発生率となっていること,日車実車キロといった指標による需給関係の悪化と事故件数の悪化には相関関係があると考えられることについて説明している。

 これに対し,原告は,「規制緩和がされた平成14年以降,・・・タクシーの交通事故死者数は減少傾向にあった」が,「平成21年10月に特措法が施行された後,同22年の死者数は,前年よりも増加した。」とか,「規制緩和後,走行距離1億キロあたりのタクシーの交通事故死者数は減少傾向にあったが,特措法施行後の平成22年に増加したことがわかる。」と主張するが,被告も供給過剰の状況(需給関係の悪化)のみが交通事故の発生に影響を与える要因であるなどと主張しているものではないし,わずか平成22年の1か年に交通事故死者数が増加したという一事をもって,供給過剰と輸送の安全性の低下とは無関係であると断定できるものでもない。そもそも,輸送の安全性の確保は交通事故死者数の数値のみによって測られるものではないのであるから,原告の上記主張は,上記報告書のデータを片面的に評価するものといわざるを得ない。

5 特定地域の措定が違法である旨の主張について
(1)原告は,「特別区・武三交通圏においては,実働一日一車当たりの運送収入が他地域に比べでずば抜けて高く,また,すでに規制緩和前の車両数以下となっているから,供給過剰の状態にあるとはいえず,『特に必要であると認める』地域であるとはいえない」として,特別区・武三交通圏を特定地域に指定したことが違法であると主張する(原告第2準備書面9及び10ページ)。

(2)しかしながら,前記1(2)において述べたところと同様に,特定地域の指定は,飽くまで当該地域(交通圏)における一般乗用旅客自動車運送事業の供給過剰等の状況に照らして検討,判断されるものであって(特措法3条),他の地域(交通圏)の状況と比較することで判断するものではない。また,既述のとおり,供給過剰とは,供給輸送力が輸送需要量に対し過剰であることをいうのであり(特措法3条1項2号),車両数の比較によって決まるものでもない。

 原告の上記主張は,特措法における特定地域の指定に係る枠組みを正解しないものであり,失当である。

以上

ロイヤルリムジン増車却下取り消し訴訟・被告(国)の準備書面




ロイヤルリムジン(金子健作社長、東京都江東区、50台)による
タクシー30台の増車却下は違法として、
国を相手取って増車却下処分の取り消しと増車認可、
そして国に増車認可の義務付けを求めた裁判の第5回口頭弁論が3月7日、
東京地裁民事第二部第703号法廷で行われた。

今回は被告(国)が3月1日付けに提出した
準備書面の全文を、2回に分けて公開する。
その後、意見書も公開予定。


※※※※※※※※※※以下、被告の準備書面※※※※※※※※※※
(ブログの設定上、文字が左寄せ配置になっております)

平成24年(行ウ)第327号 事業計画変更認可申綺却下処分取消等請求事件
原  告  ロイヤルリムジン株式会社
被  告  国(処分行政庁:関東運輸局東京運輸支局長)

準備書面(3)
平成25年3月1日

東京地方裁判所民事弟2部A係 御中



 被告は,本準備書面において,原告の平成25年1月17日付け準備書面2(以下「原告第2準備書面」という。)に対し,必要と認める限度で反論する。

 なお,略語等は,本準備書面において新たに用いるもののほか,従前の例による。

第1特措法による供給過剰対策及び収支計画要件には必要性,合理性が認められること

1 はじめに 
 原告は,措置基準Ⅲ3(l)に定める収支計両要件は「実際には増車を一律に禁止する需給調整規制と言うほか」なく(原告第2準備書面4ないし6ぺ-ジ),措置基準は違法であるなどと主張し,同主張を根拠づけるものとして,井手秀樹教授(甲第37号証)及び古城誠教授(甲第40号証)作成の各準備書面を提出するようである。

この点 供給過剰対策及び収支計画要件の必要性,合理性については被告準備書面(1)第3の2(21ないし38ページ)で,また,収支計画要件が平成12年改正前の需給調整規制とはその性質を異にするものであることは被告の平成24年12月6日付け準備書面(2)(以下「被告準備書面(2)」という。)第1(3ないし8ページ)でそれぞれ詳論したとおりであるが,これらに加えて,以下に述べるような特措法の立法経過等を併せれば,供給過剰対策及び措置基準として収支計画要件が設けられたことに十分な必要性,合理性があることは,より一層明らかである。

以下,詳述する。

2 特措法による供給過剰対策の意義

(1)タクシー事業を巡る諸問題の発生とその原因について
法は,平成12年改正により,緊急調整措置や,その予防措置としての運用上の特別監視地域等の指定制度が創設されたが,これらの指定制度は事態の悪化の防止を図ることを目的としており,事態の改善を図ることを目的としたものではなかったため,上記の各措置だけでタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できないという状況を解消することは困難であった。

以下,上記の点に閲し,交通政策審議会において指摘ないし確認されたタクシー事業を巡る諸問題について,その概要を述べる。

ア タクシー事業を巡る諸問題の主たる原因がタクシーの供給過剰にあること
交通政策審議会の答申では,以下のとおり,タクシー事業については、地域により運転者の労働条件の悪化等の諸問題が発生していたところ,取り分け,タクシーの輸送人員の減少及び過剰な輸送力の増加が相まって生じる供給過剰が,これらの諸問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘された(乙第11号証3ないし5ページ)。

Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生
現在のタクシー事業については,地域によって状況や程度は異なるものの,一般的に,以下のような問題が生じている。

① タクシー事灘の収益基鮨の激化
タクシーの輸送人員が多くの地域で年々減少し,収入も減少している一方で,燃料費をはじめとする経費は増加しており,タクシーの実質的な収益基盤は悪化している。

② 運転者の労働条件の悪化
タクシー運転者の賃金等の労働条件は、長期的に悪化傾向にあり,他産業に比べて非常に低い水準となっている。賃金の低下は,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指輪されている。また,若年労働者の就職意欲を減じる要因ともなっており,結果的にタクシー運転者の著しい高齢化が進んでいる。

③ 適法・不適切な事業運営の横行
過度な長時間労働や最低賃金法違反,社会保険・労働保険の未加入,不適切な運行管理や名義貸しによる経営など,コンプライアンスの見地から問題のある事例が生じている。

④ 道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題
多数のタクシー車両が繁華街や鉄道駅等に集中する結果,周辺の道路混雑や歩行者との交錯が生じ,地域における円滑な交通の確保という観点から看過し得ない状況が生じている事例がある。これらの問題は,良好なまちづくりなどの都市政策にも悪影響を及ぼしているほか,車両の無駄な空車走行等による燃料消費は,環境問題への対処という視点からも問題である。

⑤ 利用者サービスが不十分
サービスの多様化や実車率の向上等の経営効率化が不十分である中で運賃が上昇するなど,規制緩和の効果が十分に発現せず,利用者の利便の増進が十分に達成されていないとの指摘がある。また,そうした問題以前に,接客態度が不良,地理が不案内といったサービス産業としての基本が欠けているという指摘も依然として多い。
①から⑤までで述べたこれらの問題は,タクシーが,Ⅱ(引用者注:「Ⅱ タクシーの役割と検討の視点」の項のこと〉で述べたような我が国の地域公共交通の分野で担うべき重要な役割を適切に果たしていく上で障害となっている。また,これらの問題は,いずれも,最終的にはそれぞれの地域で暮らす消費者に不利益を及ぼすものと考えられ,看過できない。

したがって,こうした状況に対処し,それぞれの地域においてタクシーの機能を安定的に維持・活性化していくためには,これらの諸問題の発生の原因を明らかにした上で,これに的確な対策を講じていくことが必要である。

Ⅳ 諸問題の原因
タクシー事業を巡る諸問題は,いくつかの原因が複合して発生していると考えられるが,その原因を大きく分けると,以下の点が挙げられる。

また,以下に掲げる原因のうち,とりわけ,①,②の原因が相まって生じる供給過剰は,これらの問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘されている。

① タクシーの輸送人員の減少
地域によって事情は異なるものの,一般的には,自家用車の普及,鉄道・バスなどの都市交適の整備,運転代行業等との競合,人口減少などの要因によって,多くの地域でタクシーの輸送人員が減少しており,このことが,タクシー事業の収益基盤の悪化等を招く大きな原因となっている。

② 過剰な輸送力の増加
多くの地域では,需要が減少しているにもかかわらず,供給が増加し,又はその規模が維持されており,その結果,車両1台当たりの収入の低下や都市規模を超えた車両数の増加を通じて,Ⅲ(引用者注:上記「Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生」の項のこと)で述べた諸問題の深刻化を招いている。
(似下省略)」

イ 供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があると認められること
 前記アのとおり,タクシー事業においては,輸送人員の減少と過剰な輸送力の増加が相まって供給過剰が生じ,これにより,タクシー運転者の賃金が低下し,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指摘されていた。
この点,交通政策審議会においても,供給過剰による過当競争が生じると実車率が落ち込むことになり,供給過剰の度合いが高まるにつれ,タクシーの車両100万キロメートル当たりの事故発生件数が増加するというデータが示されていた(乙第28号証)のであって,供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があるといえる。

ウ 緊急調整措置は最終的な措置として存置されたこと
法は,供給過剰に対する対策として緊急調整措置の制度を定めているところ,交通政策審議会においては,緊急調整地域の指定について,5年前から既に供給過剰状態で,その後の変化がそれほど大きくない地域は指定されないこと,長期にわたって緩やかに実車キロや営業収入が減少している地域は指定されないこと,実際に事故が多発しなければ指定されないことなどの批判的な意見があることが指摘されていた(乙第29号証)。

このような批判を踏まえ,交通政策審議会の答申においては,緊急調整措置がいわば権利制限性の強い規制であることに鑑み,「法に基づく現行の緊急調整措置は,著しい供給過剰が生じている場合に,供給が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認められるときに,事態の更なる悪化を防止するための非常手段として設けられているものであるが,上記のような特定地域指定制度を設けたとしても,それとは目的を異にするものとして,輸送の安全と旅客の利便を確保するための最終的な措置として,引き続き存置しておくことも必要」(乙第11号証15ページ)としつつ,「供給過剰の進行によりタクシー運転者の賃金が低下傾向にあるといったように,特定の指標が一定期間を通じて悪化している地域を優先的に指定し,そうした地域の問題に歯止めをかけ,その改善を図ることとす」る特定地域指定制度の創設が提唱され(乙第11号証14ページ),緊急調整措置についても,最終的な措置として存置ずる必要があることが確認された。

エ 国会での議論                  ‘
 内閣は,前記イ及びウの経緯等を踏まえ,「特定の地域における輸送需要及び当該地域の状況に応じた一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進するため…道路運送法の特例等について定める必要がある」として,特措法(政府案)を第171回国会に提出した(乙第30号証8ページ)。

これを受けた国会における特措法(政府案)の審議過程等においても,以下のとおり,供給過剰による輸送の安全や利用者利便が低下することを懸念する議論がなされていた。

(ア)菅原一秀議員は,平成21年5月22日に開かれた衆議院国土交通委員会において,平成20年「7月に,いわゆる特定特別監視地域を大変数多く指定して,…一定の効果が見込めるんだろう,こう思うわけでありますが,それでも今回の法案に至ったということは,昨年の7月からの特定特別監視地域,この地域指定によってどれだけの効果があって,その上でこの法案の…特定地域を設定して,さまざま努力をするということにつながるのか」と質問し(乙第31号証13ページ),川崎稔議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「従来の特別監視地域あるいは特定特別監視地域…による対応と今回の特措法との関係…についてはどうな」つているのかと質問した(乙第34号証35ページ)。

また,川内博史議員は,同年6月9日に開かれた同委員会において,「事業者の皆さんやドライバーの皆さんが規制緩和をする前におっしゃっていたことが現実のものになりましたねということ…事業者とドライバーが言っているとおりの,交通事故がふえますよ,そんなことをしたら交通事改がふえるんです,労働条件は悪化して大変なことになりますということをみんなが言っていた」と指摘した(乙第33号証25ページ)。
これらの質問等に対して,本田勝政府参考人(当時の国土交通省自動車交通局長,以下「本田参考人」という。)は,「現行法のもとで,できる限り安易な供給拡大を抑制するという見地から,特定特別監視地域制度,この大幅な見直しを行い,百九地域を指定させていただいて,供給抑制のための措置を講じて」いるが,「あくまでもこれは現行法の範囲内ということでございまして,やはりケースによっては,供給過剰地域であるにもかかわらず,新規参入に係る申請を却下することができない,あるいは増車についても行政指導にとどまらざるを得ない,そういった制度上の限界はある」(乙第31号証13及び14ページ)ことや,「今回の問題の発端となっておりますとおり,地域によっては需要が減っているにもかかわらず供給が増えてしまう,そのことによってそこで働くドライバーの方々の労働条件が年々悪化する,そういったことに対応するために,現在の道路運送法を当然前提にして,行政運用としてできる限り供給を抑制し,かつタクシーを良くしていく,そういった試みを行政運用としてやらせていただいておりますのが特別監視地域,さらには特定特別監視地域といった制度で」あるが,「供給過剰が著しいために,例えば40両の新規参入しか認めないと私どもが申し上げたところで,その40両以上の新規参入に対してそれを拒否する理由は道路運送法には今ございません。…したがって,これらの問題についてはやはり現在の道路運送法では対応できないということで,新たな立法措置として今回の法案をお願いし,その中での特定地域につきましては法律に基づいて新規参入や増車について抑制できる,そういった法的相拠を置いていただきたいと,これが2つの制度の関係でございます。」(乙第34号証35ページ),「規制緩和を実施させていただく際に,…御指摘のとおりの懸念があったことは事実でありますし,地域によって状況の差はありますけれども,需要が低迷する中で車両が増加するといった事態で,その結果,懸念されておりました労働条件の悪化あるいは交通事故の増加といった現象が生じたのは事実であり…単に市場に多少の手を加えるだけではこの問題の解決は済まない,・‥そういった規制を見直すということも含めて今回対策を講じたいというのが,この答申に基づく我々の考え方でございます」(乙第33号証25ページ)などと答奔した。

(イ)また,三日月大造議員は,平成21年6月9日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「今回,供給過剰の状態と運賃の問題に対処しなければならない一つの理由として,タクシーの事故がふえているし,減らない,他の事業用自動車に比べて多いという問題がありました。どれぐらいの事故が発生をしているのか。」と質問し(乙第33号証15ページ),米長晴信議員も,平成21年6月18日に開かれた参議院国土交通委員会において,「安全に問題が生じるということで…国土交通省さんの作った資料で需給状況と事件件数のグラフ(引用者注:乙第28号証のグラフのこと)があり…,これは私が見る限り,台数あるいは空車で走っている量が多ければ多いほど事故の発生件数が増えているいうようなふうに読み取れるんですけれども,この相関関係はいかが」かと質問した(乙第35号証32及び33ページ)。

これらの質問に対して,本田参考人は,「タクシーの事故の問題でございますが,まず,警察庁の統計に基づきます平成二十年のタクシーの交通事故件数は,全国で二万四千三十件でございました。この状況を他のものと比較いたしますと,まず,全自動車事故に比べて,ここ数年の状況については,タクシー事故の減少の歩みが非常に鈍いという特徴がございます。さらに,数値的に申しましても,同じ走行距離当たりの交通事故件数で見ますと,タクシーの場合には,残念ながら,全自動車の平均の約一・八倍という事故発生率になって」おり(乙第33号証15ページ),また,「日車実車キロといった指標による需給関係の悪化と事故件数の悪化…というのは,統計上,明白な相関関係がある」と答弁した(乙第35号証33ページ)。

そして,この答弁に対しては,米長晴信議員も,「私は国土交通省のこの表の見方が妥当なんじゃないか」と指摘していた(乙第35号証34ページ)。

(2)安易な供給拡大に対する抑制策について
前記(1)エで述べた議論と共に,これと表裏一体のものとして,以下に述べるように,特定地域での新規参入,増車の歯止めの方策及びその方針についても国会で議論がされた。

ア 福井照議員は,平成21年6月5日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「新規参入を含めて,安易な供給拡大,これはもう厳に抑制すべきだと思いますけれども,その方策,その方針,どのようにされるのか」と質問し(乙第32号証13ページ),また,羽田雄一郎議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「タクシーが供給過剰な地域を特定地域と指定した場合の運用方針について」どのようなものとするのか質問した(乙第34号証18ページ)。

イ これらの質問に対して,本田参考人は,「法案(引用者注:特措法(政府案)のこと)におきましては,国は,特定地域においては,タクシー事業の適正化を推進するため,道路運送法に基づく処分,この中には,当然新規参入の許可,あるいは今回特定地域で導入させていただきたいと考えております増車の認可といった処分がございますが,これを的確に実施するという条文がございます。したがって,特定地域においては安易な供給拡大は国として厳に抑制すべきであると考えておりまして,新規参入あるいは増車の申請に対しては,原則としてこれを認めないという運用をさせていただきたいと考えております。」(乙第32号証13ページ),「本法案におきます特定地域は,タクシーの供給過剰が進行し,それに伴ってそこで働いておられます運転者の方々の労働条件が悪化していく,したがってこれ以上の供給の増加を抑制する,こういう見地から,今後の運用に当たっては,新規参入あるいは増車というものについて,原則,厳しく抑制させていただく」などと答弁した(乙第34号証18ページ〉。

(3)小括
以上のとおり,特措法は,交通政策審議会の答申において,タクシー事業を巡る諸問題を一層深刻化させる大きな原因であると強く指輪されたことを受け,供給過剰の状況の解決を図るために,前記(1)及び(2)のような国会での議論を踏まえて,衆・参両議員ともに全会一致で可決,成立したものである。
 このような経過に照らせば,タクシー事業における供給過剰対策を講じる必要性,合理性は十分に認められ,これを実現することこそが特措法の本旨に適うというべきである。

3収支計画要件を設けたことに合理性があること

(1)収支計画要件の必要性
 前記2のとおり,特措法は,その立法過程において,特定地域における新規参入や増車申請について,安易な供給拡大は厳に抑制する必要があることが議論された上で制定されたものである。

 すなわち,タクシー事業を巡る諸問題の大きな原因と指摘された供給過剰の構造は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,地域で需要が減少しているにもかかわらず供給が増加しているということにほかならないところ,特定地域における安易な供給拡大は,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下をもたらすものであるから,厳格に抑制することが求められているといえる。

 しかして,収支計画要件は,増車車両分の営業収入が申請する営業区域内で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めるものであるところ,増車により得られると見込まれる増収が,収支計画要件がいうところの当該地域における新規の輸送需要ではなく,既存の輸送需要に拠っているにすぎない場合にまで増車を認めてしまえば,既に供給過剰状態にあるとして特定地域に指定された営業区域内にさらにタクシーを増車させてしまうことになるのであって,このような対応は,上記に述べた特措法の趣旨・目的に明らかに違背する。

 それゆえ,特措法の趣旨・目的を実現するためには,措置基準の一要件として収支計画要件を設けることは必須というべきである。

(2)収支計画要件の合理性
ア 「新たに発生する輸送需要によるものであること」について

(ア)処理方針
被告準備書面(1)第3の2(4)(34ないし38ページ)で述べたとおり,措置基準は,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するとの観点から,増車の認可申請に対する審査を厳格に行うことを定めたものであり,このうち,収支計画要件は前記(1)の必要性を踏まえ,措置基準における増車認可申請に対する審査基準の一つを定めたものである。

 すなわち,前記1で詳論したようなタクシーの輸送人員の減少と相まって地域で需要が減少しているにもかかわらず,タクシーの供給が増加しているという供給過剰の構造や,供給過剰が進行している地域における対策の基本的な考え方を踏まえれば,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するためには,増車申請の当否を判断するに際し,当該増車車両が当該地域で過剰な輸送力の増加とならないかといった観点からの検討が必要となるのは当然のことといえる。

(イ)新たな輸送需要は,申請者のみならず,当該特定地域においても認められることが必要であること
 前記1(1)アで述べた供給過剰の構造を踏まえると,増車申請があった場合,増車車両が地域で過剰な輸送力の増加とならないようにするためには,まずもって,輸送需要に適合しない過剰な供給(輸送力)とならないようにすることが重要である。

 しかるに,供給過剰は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,過剰な輸送力が生じている状態をいうから,増車車両が輸送需要に適合した輸送力であったとしても,当該増車車両分の営業収入の増加が,当該地域内の既存の輸送需要を獲得することで得られるにすぎないのであれば,増車申請を認可してしまえば,むしろ供給過剰を助長することになり,ひいては,特措法の趣旨,目的に反することになる。

 そうすると,供給過剰の構造を踏まえた輸送需要に適合した輸送力といえるためには,増額車両が,当該地域内の既存の輸送需要に適合したものであるとともに,新たに発生する輸送需要に適合した輸送力であるといえなければならない。

 この点,被告準備書面(2)第3の3(10及び11ページ)で述べたとおり,収支計画要件を含めた措置基準は,法15条2項で準用する法6条2号の適合性を判断するための認可基準として定められたものであるから,特定地域に係る増車申請が収支計画要件を満たすというためには,申請者である事業者にとって輸送需要が新たに発生するものでなければならないことは当然の前提であるが,上記の理によれば,それだけにとどまらず,当該地域で新たに発生する輸送需要によるものであることが必要と解すべきである。

イ 上記アの輸送需要であることが明らかであること
収支計画要件は,増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めている。

 すなわち,収支計画要件は,タクシーの供給過剰により輸送の安全確保や利用者の利益の保護に弊害が生じる危険性が高い特定地域において,増車車両が,それらの弊害を生じさせることなく適切に事業を遂行できるか否かを厳格に審査するための要件であるから,当該営業区域で新たに発生する輸送需要であるかどうかは,申請者こよって,一義的に,すなわち,誰の目にも明らかな程度に客観的かつ合理的に明らかにされなければならないというべきである。

ウ 小括
 以上によれば,収支計画要件は,特定地域における増車申請の審査基準として,特措法の趣旨,日的に適うものであって,合理性を有するというべきである。

(第2 その余の原告の主張に対する反論 以降は後日アップいたします)

ロイヤルリムジン増車却下取り消し訴訟・被告(国)の準備書面(




平成24年(行ウ)第327号 事業計画変更認可申綺却下処分取消等請求事件
原  告  ロイヤルリムジン株式会社
被  告  国(処分行政庁:関東運輸局東京運輸支局長)

準備書面(3)
平成25年3月1日

東京地方裁判所民事弟2部A係 御中

第1 特措法による供給過剰対策及び収支計画要件には必要性、合理性が認められること
1 はじめに
2 特措法による供給過剰対策の意義
(1)タクシー事業を巡る諸問題の発生とその原因について
(2)安易な供給拡大に対する抑制策について
(3)小括
3 収支計画要件を設けたことに合理性があること
(1)収支計画要件の必要性
(2)収支計画要件の合理性
第2 その余の原告の主張に対する反論
1井手教授らの意見に依拠した原告の主張に理由がないこと
2日車営収からみれば,特別区・武三交通圏は他の地域ほど供給過剰にはないとの主張について
3引用裁判例に係る主張について
4輸送の安全性の確保に係る主張について
5 特定地域の指定が違法である旨の主張について


 被告は,本準備書面において,原告の平成25年1月17日付け準備書面2(以下「原告第2準備書面」という。)に対し,必要と認める限度で反論する。
 なお,略語等は,本準備書面において新たに用いるもののほか,従前の例による。

第1特措法による供給過剰対策及び収支計画要件には必要性,合理性が認められること
1 はじめに
  原告は,措置基準Ⅲ3(l)に定める収支計両要件は「実際には増車を一律に禁止する需給調整規制と言うほか」なく(原告第2準備書面4ないし6ぺ-ジ),措置基準は違法であるなどと主張し,同主張を根拠づけるものとして,井手秀樹教授(甲第37号証)及び古城誠教授(甲第40号証)作成の各準備書面を提出するようである。
この点 供給過剰対策及び収支計画要件の必要性,合理性については被告準備書面(1)第3の2(21ないし38ページ)で,また,収支計画要件が平成12年改正前の需給調整規制とはその性質を異にするものであることは被告の平成24年12月6日付け準備書面(2)(以下「被告準備書面(2)」という。)第1(3ないし8ページ)でそれぞれ詳論したとおりであるが,これらに加えて,以下に述べるような特措法の立法経過等を併せれば,供給過剰対策及び措置基準として収支計画要件が設けられたことに十分な必要性,合理性があることは,より一層明らかである。
以下,詳述する。

2 特措法による供給過剰対策の意義
(1)タクシー事業を巡る諸問題の発生とその原因について
法は,平成12年改正により,緊急調整措置や,その予防措置としての運用上の特別監視地域等の指定制度が創設されたが,これらの指定制度は事態の悪化の防止を図ることを目的としており,事態の改善を図ることを目的としたものではなかったため,上記の各措置だけでタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できないという状況を解消することは困難であった。
以下,上記の点に閲し,交通政策審議会において指摘ないし確認されたタクシー事業を巡る諸問題について,その概要を述べる。

ア タクシー事業を巡る諸問題の主たる原因がタクシーの供給過剰にあること
交通政策審議会の答申では,以下のとおり,タクシー事業については、地域により運転者の労働条件の悪化等の諸問題が発生していたところ,取り分け,タクシーの輸送人員の減少及び過剰な輸送力の増加が相まって生じる供給過剰が,これらの諸問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘された(乙第11号証3ないし5ページ)。
Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生
現在のタクシー事業については,地域によって状況や程度は異なるものの,一般的に,以下のような問題が生じている。
① タクシー事灘の収益基鮨の激化
タクシーの輸送人員が多くの地域で年々減少し,収入も減少している一方で,燃料費をはじめとする経費は増加しており,タクシーの実質的な収益基盤は悪化している。
② 運転者の労働条件の悪化
タクシー運転者の賃金等の労働条件は、長期的に悪化傾向にあり,他産業に比べて非常に低い水準となっている。賃金の低下は,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指輪されている。また,若年労働者の就職意欲を減じる要因ともなっており,結果的にタクシー運転者の著しい高齢化が進んでいる。
③ 適法・不適切な事業運営の横行
過度な長時間労働や最低賃金法違反,社会保険・労働保険の未加入,不適切な運行管理や名義貸しによる経営など,コンプライアンスの見地から問題のある事例が生じている。
④ 道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題
多数のタクシー車両が繁華街や鉄道駅等に集中する結果,周辺の道路混雑や歩行者との交錯が生じ,地域における円滑な交通の確保という観点から看過し得ない状況が生じている事例がある。これらの問題は,良好なまちづくりなどの都市政策にも悪影響を及ぼしているほか,車両の無駄な空車走行等による燃料消費は,環境問題への対処という視点からも問題である。
⑤ 利用者サービスが不十分
サービスの多様化や実車率の向上等の経営効率化が不十分である中で運賃が上昇するなど,規制緩和の効果が十分に発現せず,利用者の利便の増進が十分に達成されていないとの指摘がある。また,そうした問題以前に,接客態度が不良,地理が不案内といったサービス産業としての基本が欠けているという指摘も依然として多い。
①から⑤までで述べたこれらの問題は,タクシーが,Ⅱ(引用者注:「Ⅱ タクシーの役割と検討の視点」の項のこと〉で述べたような我が国の地域公共交通の分野で担うべき重要な役割を適切に果たしていく上で障害となっている。また,これらの問題は,いずれも,最終的にはそれぞれの地域で暮らす消費者に不利益を及ぼすものと考えられ,看過できない。
したがって,こうした状況に対処し,それぞれの地域においてタクシーの機能を安定的に維持・活性化していくためには,これらの諸問題の発生の原因を明らかにした上で,これに的確な対策を講じていくことが必要である。

Ⅳ 諸問題の原因
タクシー事業を巡る諸問題は,いくつかの原因が複合して発生していると考えられるが,その原因を大きく分けると,以下の点が挙げられる。
また,以下に掲げる原因のうち,とりわけ,①,②の原因が相まって生じる供給過剰は,これらの問題を一層深刻化させる大きな原因となっていることが強く指摘されている。
① タクシーの輸送人員の減少
地域によって事情は異なるものの,一般的には,自家用車の普及,鉄道・バスなどの都市交適の整備,運転代行業等との競合,人口減少などの要因によって,多くの地域でタクシーの輸送人員が減少しており,このことが,タクシー事業の収益基盤の悪化等を招く大きな原因となっている。
② 過剰な輸送力の増加
多くの地域では,需要が減少しているにもかかわらず,供給が増加し,又はその規模が維持されており,その結果,車両1台当たりの収入の低下や都市規模を超えた車両数の増加を通じて,Ⅲ(引用者注:上記「Ⅲ タクシー事業を巡る諸問題の発生」の項のこと)で述べた諸問題の深刻化を招いている。
(似下省略)」

イ 供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があると認められること
 前記アのとおり,タクシー事業においては,輸送人員の減少と過剰な輸送力の増加が相まって供給過剰が生じ,これにより,タクシー運転者の賃金が低下し,一定の収入を確保するための長時間労働や,これに伴うタクシーの安全性やサービスの低下の要因となっていることが指摘されていた。
この点,交通政策審議会においても,供給過剰による過当競争が生じると実車率が落ち込むことになり,供給過剰の度合いが高まるにつれ,タクシーの車両100万キロメートル当たりの事故発生件数が増加するというデータが示されていた(乙第28号証)のであって,供給過剰の状況と輸送の安全性の確保には相関関係があるといえる。

ウ 緊急調整措置は最終的な措置として存置されたこと
法は,供給過剰に対する対策として緊急調整措置の制度を定めているところ,交通政策審議会においては,緊急調整地域の指定について,5年前から既に供給過剰状態で,その後の変化がそれほど大きくない地域は指定されないこと,長期にわたって緩やかに実車キロや営業収入が減少している地域は指定されないこと,実際に事故が多発しなければ指定されないことなどの批判的な意見があることが指摘されていた(乙第29号証)。
このような批判を踏まえ,交通政策審議会の答申においては,緊急調整措置がいわば権利制限性の強い規制であることに鑑み,「法に基づく現行の緊急調整措置は,著しい供給過剰が生じている場合に,供給が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認められるときに,事態の更なる悪化を防止するための非常手段として設けられているものであるが,上記のような特定地域指定制度を設けたとしても,それとは目的を異にするものとして,輸送の安全と旅客の利便を確保するための最終的な措置として,引き続き存置しておくことも必要」(乙第11号証15ページ)としつつ,「供給過剰の進行によりタクシー運転者の賃金が低下傾向にあるといったように,特定の指標が一定期間を通じて悪化している地域を優先的に指定し,そうした地域の問題に歯止めをかけ,その改善を図ることとす」る特定地域指定制度の創設が提唱され(乙第11号証14ページ),緊急調整措置についても,最終的な措置として存置ずる必要があることが確認された。

エ 国会での議論                  ‘
 内閣は,前記イ及びウの経緯等を踏まえ,「特定の地域における輸送需要及び当該地域の状況に応じた一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進するため…道路運送法の特例等について定める必要がある」として,特措法(政府案)を第171回国会に提出した(乙第30号証8ページ)。
これを受けた国会における特措法(政府案)の審議過程等においても,以下のとおり,供給過剰による輸送の安全や利用者利便が低下することを懸念する議論がなされていた。
(ア)菅原一秀議員は,平成21年5月22日に開かれた衆議院国土交通委員会において,平成20年「7月に,いわゆる特定特別監視地域を大変数多く指定して,…一定の効果が見込めるんだろう,こう思うわけでありますが,それでも今回の法案に至ったということは,昨年の7月からの特定特別監視地域,この地域指定によってどれだけの効果があって,その上でこの法案の…特定地域を設定して,さまざま努力をするということにつながるのか」と質問し(乙第31号証13ページ),川崎稔議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「従来の特別監視地域あるいは特定特別監視地域…による対応と今回の特措法との関係…についてはどうな」つているのかと質問した(乙第34号証35ページ)。
また,川内博史議員は,同年6月9日に開かれた同委員会において,「事業者の皆さんやドライバーの皆さんが規制緩和をする前におっしゃっていたことが現実のものになりましたねということ…事業者とドライバーが言っているとおりの,交通事故がふえますよ,そんなことをしたら交通事改がふえるんです,労働条件は悪化して大変なことになりますということをみんなが言っていた」と指摘した(乙第33号証25ページ)。
これらの質問等に対して,本田勝政府参考人(当時の国土交通省自動車交通局長,以下「本田参考人」という。)は,「現行法のもとで,できる限り安易な供給拡大を抑制するという見地から,特定特別監視地域制度,この大幅な見直しを行い,百九地域を指定させていただいて,供給抑制のための措置を講じて」いるが,「あくまでもこれは現行法の範囲内ということでございまして,やはりケースによっては,供給過剰地域であるにもかかわらず,新規参入に係る申請を却下することができない,あるいは増車についても行政指導にとどまらざるを得ない,そういった制度上の限界はある」(乙第31号証13及び14ページ)ことや,「今回の問題の発端となっておりますとおり,地域によっては需要が減っているにもかかわらず供給が増えてしまう,そのことによってそこで働くドライバーの方々の労働条件が年々悪化する,そういったことに対応するために,現在の道路運送法を当然前提にして,行政運用としてできる限り供給を抑制し,かつタクシーを良くしていく,そういった試みを行政運用としてやらせていただいておりますのが特別監視地域,さらには特定特別監視地域といった制度で」あるが,「供給過剰が著しいために,例えば40両の新規参入しか認めないと私どもが申し上げたところで,その40両以上の新規参入に対してそれを拒否する理由は道路運送法には今ございません。…したがって,これらの問題についてはやはり現在の道路運送法では対応できないということで,新たな立法措置として今回の法案をお願いし,その中での特定地域につきましては法律に基づいて新規参入や増車について抑制できる,そういった法的相拠を置いていただきたいと,これが2つの制度の関係でございます。」(乙第34号証35ページ),「規制緩和を実施させていただく際に,…御指摘のとおりの懸念があったことは事実でありますし,地域によって状況の差はありますけれども,需要が低迷する中で車両が増加するといった事態で,その結果,懸念されておりました労働条件の悪化あるいは交通事故の増加といった現象が生じたのは事実であり…単に市場に多少の手を加えるだけではこの問題の解決は済まない,・‥そういった規制を見直すということも含めて今回対策を講じたいというのが,この答申に基づく我々の考え方でございます」(乙第33号証25ページ)などと答奔した。
(イ)また,三日月大造議員は,平成21年6月9日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「今回,供給過剰の状態と運賃の問題に対処しなければならない一つの理由として,タクシーの事故がふえているし,減らない,他の事業用自動車に比べて多いという問題がありました。どれぐらいの事故が発生をしているのか。」と質問し(乙第33号証15ページ),米長晴信議員も,平成21年6月18日に開かれた参議院国土交通委員会において,「安全に問題が生じるということで…国土交通省さんの作った資料で需給状況と事件件数のグラフ(引用者注:乙第28号証のグラフのこと)があり…,これは私が見る限り,台数あるいは空車で走っている量が多ければ多いほど事故の発生件数が増えているいうようなふうに読み取れるんですけれども,この相関関係はいかが」かと質問した(乙第35号証32及び33ページ)。
これらの質問に対して,本田参考人は,「タクシーの事故の問題でございますが,まず,警察庁の統計に基づきます平成二十年のタクシーの交通事故件数は,全国で二万四千三十件でございました。この状況を他のものと比較いたしますと,まず,全自動車事故に比べて,ここ数年の状況については,タクシー事故の減少の歩みが非常に鈍いという特徴がございます。さらに,数値的に申しましても,同じ走行距離当たりの交通事故件数で見ますと,タクシーの場合には,残念ながら,全自動車の平均の約一・八倍という事故発生率になって」おり(乙第33号証15ページ),また,「日車実車キロといった指標による需給関係の悪化と事故件数の悪化…というのは,統計上,明白な相関関係がある」と答弁した(乙第35号証33ページ)。
そして,この答弁に対しては,米長晴信議員も,「私は国土交通省のこの表の見方が妥当なんじゃないか」と指摘していた(乙第35号証34ページ)。

(2)安易な供給拡大に対する抑制策について
前記(1)エで述べた議論と共に,これと表裏一体のものとして,以下に述べるように,特定地域での新規参入,増車の歯止めの方策及びその方針についても国会で議論がされた。
ア 福井照議員は,平成21年6月5日に開かれた衆議院国土交通委員会において,「新規参入を含めて,安易な供給拡大,これはもう厳に抑制すべきだと思いますけれども,その方策,その方針,どのようにされるのか」と質問し(乙第32号証13ページ),また,羽田雄一郎議員も,同年6月16日に開かれた参議院国土交通委員会において,「タクシーが供給過剰な地域を特定地域と指定した場合の運用方針について」どのようなものとするのか質問した(乙第34号証18ページ)。
イ これらの質問に対して,本田参考人は,「法案(引用者注:特措法(政府案)のこと)におきましては,国は,特定地域においては,タクシー事業の適正化を推進するため,道路運送法に基づく処分,この中には,当然新規参入の許可,あるいは今回特定地域で導入させていただきたいと考えております増車の認可といった処分がございますが,これを的確に実施するという条文がございます。したがって,特定地域においては安易な供給拡大は国として厳に抑制すべきであると考えておりまして,新規参入あるいは増車の申請に対しては,原則としてこれを認めないという運用をさせていただきたいと考えております。」(乙第32号証13ページ),「本法案におきます特定地域は,タクシーの供給過剰が進行し,それに伴ってそこで働いておられます運転者の方々の労働条件が悪化していく,したがってこれ以上の供給の増加を抑制する,こういう見地から,今後の運用に当たっては,新規参入あるいは増車というものについて,原則,厳しく抑制させていただく」などと答弁した(乙第34号証18ページ〉。

(3)小括
以上のとおり,特措法は,交通政策審議会の答申において,タクシー事業を巡る諸問題を一層深刻化させる大きな原因であると強く指輪されたことを受け,供給過剰の状況の解決を図るために,前記(1)及び(2)のような国会での議論を踏まえて,衆・参両議員ともに全会一致で可決,成立したものである。
 このような経過に照らせば,タクシー事業における供給過剰対策を講じる必要性,合理性は十分に認められ,これを実現することこそが特措法の本旨に適うというべきである。

3収支計画要件を設けたことに合理性があること
(1)収支計画要件の必要性
 前記2のとおり,特措法は,その立法過程において,特定地域における新規参入や増車申請について,安易な供給拡大は厳に抑制する必要があることが議論された上で制定されたものである。
 すなわち,タクシー事業を巡る諸問題の大きな原因と指摘された供給過剰の構造は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,地域で需要が減少しているにもかかわらず供給が増加しているということにほかならないところ,特定地域における安易な供給拡大は,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下をもたらすものであるから,厳格に抑制することが求められているといえる。
 しかして,収支計画要件は,増車車両分の営業収入が申請する営業区域内で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めるものであるところ,増車により得られると見込まれる増収が,収支計画要件がいうところの当該地域における新規の輸送需要ではなく,既存の輸送需要に拠っているにすぎない場合にまで増車を認めてしまえば,既に供給過剰状態にあるとして特定地域に指定された営業区域内にさらにタクシーを増車させてしまうことになるのであって,このような対応は,上記に述べた特措法の趣旨・目的に明らかに違背する。
 それゆえ,特措法の趣旨・目的を実現するためには,措置基準の一要件として収支計画要件を設けることは必須というべきである。

(2)収支計画要件の合理性
ア 「新たに発生する輸送需要によるものであること」について
(ア)処理方針
被告準備書面(1)第3の2(4)(34ないし38ページ)で述べたとおり,措置基準は,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するとの観点から,増車の認可申請に対する審査を厳格に行うことを定めたものであり,このうち,収支計画要件は前記(1)の必要性を踏まえ,措置基準における増車認可申請に対する審査基準の一つを定めたものである。
 すなわち,前記1で詳論したようなタクシーの輸送人員の減少と相まって地域で需要が減少しているにもかかわらず,タクシーの供給が増加しているという供給過剰の構造や,供給過剰が進行している地域における対策の基本的な考え方を踏まえれば,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するためには,増車申請の当否を判断するに際し,当該増車車両が当該地域で過剰な輸送力の増加とならないかといった観点からの検討が必要となるのは当然のことといえる。
(イ)新たな輸送需要は,申請者のみならず,当該特定地域においても認められることが必要であること
 前記1(1)アで述べた供給過剰の構造を踏まえると,増車申請があった場合,増車車両が地域で過剰な輸送力の増加とならないようにするためには,まずもって,輸送需要に適合しない過剰な供給(輸送力)とならないようにすることが重要である。
 しかるに,供給過剰は,タクシーの輸送人員の減少と相まって,過剰な輸送力が生じている状態をいうから,増車車両が輸送需要に適合した輸送力であったとしても,当該増車車両分の営業収入の増加が,当該地域内の既存の輸送需要を獲得することで得られるにすぎないのであれば,増車申請を認可してしまえば,むしろ供給過剰を助長することになり,ひいては,特措法の趣旨,目的に反することになる。
 そうすると,供給過剰の構造を踏まえた輸送需要に適合した輸送力といえるためには,増額車両が,当該地域内の既存の輸送需要に適合したものであるとともに,新たに発生する輸送需要に適合した輸送力であるといえなければならない。
 この点,被告準備書面(2)第3の3(10及び11ページ)で述べたとおり,収支計画要件を含めた措置基準は,法15条2項で準用する法6条2号の適合性を判断するための認可基準として定められたものであるから,特定地域に係る増車申請が収支計画要件を満たすというためには,申請者である事業者にとって輸送需要が新たに発生するものでなければならないことは当然の前提であるが,上記の理によれば,それだけにとどまらず,当該地域で新たに発生する輸送需要によるものであることが必要と解すべきである。
イ 上記アの輸送需要であることが明らかであること
収支計画要件は,増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを求めている。
 すなわち,収支計画要件は,タクシーの供給過剰により輸送の安全確保や利用者の利益の保護に弊害が生じる危険性が高い特定地域において,増車車両が,それらの弊害を生じさせることなく適切に事業を遂行できるか否かを厳格に審査するための要件であるから,当該営業区域で新たに発生する輸送需要であるかどうかは,申請者こよって,一義的に,すなわち,誰の目にも明らかな程度に客観的かつ合理的に明らかにされなければならないというべきである。

ウ 小括
 以上によれば,収支計画要件は,特定地域における増車申請の審査基準として,特措法の趣旨,日的に適うものであって,合理性を有するというべきである。

第2 その余の原告の主張に対する反論
1井手教授らの意見に依拠した原告の主張に理由がないこと
(1)原告は,収支計画要件は平成12年改正前の需給調整規制と同様のものであり(甲第37号証1ページ),あるいは,需給調整規制のための基準である(甲第40号証13ページ)と主張するようである(原告第2準備書面5及び6ページ)。
 しかしながら,被告準備書面(2)第1の2(1)及び(2)(4ないし6ページ)で述べたとおり,平成12年改正前の需給調整規制は,供給過剰地域であるか否かに関わらず,需要に対して適切な車両数を算出して,それに基づき増車の当否を判断するというもので,いわば需要と供給の均衡を行政が直接的に調整することによって,道路運送に関する秩序を確立することを目的とするものであって,供給輸送力に着目した規制であったといえる。
 これに対し,収支計画要件は,既にタクシーの供給が過剰状態にある特定地域における営業区域内での増車申請の当否を判断するに当たり,増車車両分の営業収入が新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであることを要件とするものであり,新規輸送裾需要の有無に着目した基準といえるから,この点において,従来の需給調整規制とはその性質を異にしている。
 また,収支計画要件は,従来の需給調整規制の目的とは異なり,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止し,もって輸送の安全や利用者の利益の保護を目的とするものであるから,この点においても,従来の需給調整規制とは異なる。
 したがって,収支計画要件と従来の需給調整規制とを同一,同質のものとする原告の主張は理由がない。
(2) また,原告は,「タクシー事業者が明らかな新規需要を立証できない限り増車を認めないとする政策には,経済学的な合理性が全くない。」(甲第37号証17ページ)と述べるようである。
 しかしながら,繰り返すように,収支計画要件は,供給過剰の状況にある特定地域において,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止するために定められたものであり,需給調整規制によって適切な車両数を経済学的に算出するためのものではないから,収支計画要件に「経済学的な合理性が全くない。」との原告の指摘は単なる政策的意見にとどまるばかりでなく,収支計画要件の意義,目的を正解しないものといわぎるを得ない。
 さらに,原告は,「需給調整規制を行うには,法律の明文の根拠が必要であり,明文の根拠がないのに,(中略)需給規制を根拠づけることは許されない。」(甲第40号証14ページ)などと述べる。       t
 この点,収支計画要件は需給調整規制と同一ではないから,原告の上記主張はその前提において理由がないが,この点をおくとしても,被告準備書面(1)第3の2等において述べたとおり,措置基準は,法15条2項が準用する法6条の許可(認可)基準適合性を判断する上で考慮すべき要素を具体的に掲げた審査基準であり,特定地域における新規の増車等に係る事業認可等については,安易な供給拡大を抑制し,認可処分,審査の厳格化を図るという前述の基本方針の定めを反映させたものであり,収支計画要件も,供給過剰によるタクシーの輸送の安全や利便性の低下を防止する観点から,増車による需要増が明らかに見込めるもの以外は原則としてこれを認めないこととして淀められた特措法15条の趣旨に沿うものであって,法の目的とする輸送の安全の確保や道路輸送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るために定められた基準といえる。
  それゆえ,収支計画要件を設けたことにつき,「法律の明文の根拠がない」などとはいえない。

2 日車営収からみれば,特別区・武三交通圏は他の地域ほど供給過剰にはないとの主張について
(1)原告は,特別区・武三交通圏における実働1日1車当たりの運送収入(日車営収)は,平成13年度以降,「常に4万円を超えており」(乙第25号証),物価水準を考慮に入れたとしても,他の交通圏に比べて「ずば抜けて高い運送収入を上げ続けており,今後もこの傾向に変化の兆しは見られない。」として,特別区・武三交通圏は,「少なくとも他地域におけるほど,供給過剰ではないということを意味して」おり,「本件で,原告の増車申請を認めても何ら問題が無いことは,(中略)一目瞭然である。」と主張する(原告第2準備書面4ページ)。
(2)しかしながら,ある地域(交通圏)が供給過剰の状態にあるか否かは,飽くまで当該地域(交通圏)ごとに検討,判断されるべきものであって,他の地域(交通圏)との比較において検討,判断されるものではないから,原告の上記主張は,その前提において理由がない。

(以下未記入)

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